入院がん患者は、より多くの身体的・精神的症状に直面している

[2020.04.29] 文・編集●「がんサポート」編集部

がん緩和ケア(palliative care)については、2010年に米国の医学誌に「早期介入(併用治療)」の有用性が報告※されて以来、日本でも従来の終末期医療での導入から、早期からの積極的導入へと変わりつつある。

そうした状況下で、入院がん患者がどのような症状(症候:symptom)を来して、どの程度緩和ケアを受けているかを評価した研究は少ない。

先ごろ、米国がん協会(ACS)誌「Cancer」に掲載された研究報告によると、入院がん患者では、がん種を問わず、大部分の患者が疲労感や健康状態の不良などの症状を訴えており、それに対するケアが十分でないことが明らかになったという。

治癒可能な入院患者をメイン対象に

入院患者への支持療法(supportive care)プログラムの多くは、進行固形がん患者をターゲットとしており、治癒可能な入院患者での、苦痛となる症状の特性を明らかにした研究はほとんどない。

今回の研究目的は、がん種および治療意図(目的:treatment intent)別による、苦痛症状、緩和ケアの検討、再入院率を比較することにあったという。

研究は、2014~2017年間での、米国の単一施設における入院がん患者1,549例を対象に行われた。

身体的評価はエドモントン症状評価システム、心理的ストレス評価は患者健康質問票-4およびプライマリーケアPTSD(外傷後ストレス障害)スクリーンを用いて行った。

また、データ解析には、多重線形回帰モデル、ロジスティック回帰モデルを用い、さらに競合リスク回帰には、90日以内再入院リスクを用いて比較した。

入院患者の大部分が症状を訴え

その結果、患者の大部分は、中等度から重度の疲労感、健康状態の不良、眠気を訴えていたが、がん種、治療目的別での差はなかった。

また、他グループとの比較で、治癒不能な固形がん患者では、身体的症状(p<0.01)、うつ症状(p<0.01)、不安(p<0.01)がより高く、有意差が認められたが、PTSDでは差は認められなかった。

エドモントン症状評価システム(Edmonton Symptom Assessment System)での、症状負荷で 上位四分位(top quartile)に属する患者間において、緩和ケアが検討されていたのは、治癒可能な固形がん患者7.9%、治癒可能な血液患者14.7%、治癒不能な血液がん患者25.0%、治癒不能な固形がん患者49.6%(p<0.001)であった。

90日以内の再入院リスクについては、治癒可能な固形がん患者と比較して、他グループの患者で高かった。

このように、入院がん患者では、かなりの頻度で身体的・精神的症状を経験しているにもかかわらず、症状を有する治癒可能ながん患者に対する緩和ケアの検討は多くはなかった。

こうしたことから、研究者は「支持療法の介入は、治療目的に関係なく、症状を有する患者のニーズを標的として行うべきである」と結論している。

出典情報:
Symptom burden in patients with cancer who are experiencing unplanned hospitalization

※関連情報「New England Journal of Medicine」(August 19, 2010)
Early Palliative Care for Patients with Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer

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