バイオマーカー、新薬開発への期待 肝がん細胞から特異的に異常分泌されるタンパク質を発見

[2020.12.15] 取材・文●「がんサポート」編集部

東京慈恵会医科大学生化学講座助教の山田幸司さんらの研究グループは、肝がん細胞から特異的に異常分泌されるタンパク質「PKCδ」を発見したと、2020年12月9日Web記者会見を開いて発表した。このPKCδの発見により、肝がんの早期発見につながるバイオマーカーや治療薬の開発への糸口となると期待を語った。

「PKCδ」とは、プロテインキナーゼCデルタの略で、これまで細胞内のみに存在するといわれてきたPKCδが、肝がん細胞外にも特異的に分泌していることを、東京慈恵会医科大学生化学講座助教の山田幸司さんらの研究グループが突き止めた。

肝がんは、再発率がきわめて高く予後不良のがん種であり、早期発見のための精度の高いバイオマーカーが求められている。現在使われているバイオマーカーは精度が低く、2種類のバイオマーカーを併用して行うことが推奨されているが、併用でも感度は78%ほど。つまり、約20%が陰性と判断されてしまう。

そのような中、血中のPKCδ値が肝がん患者さんで高値を示したことにより、PKCδが診断精度の高い早期診断マーカーとなりえることを示した。

肝がんは慢性肝炎から肝硬変、そして肝がんへ移行することはよく知られているが、肝硬変から肝がんへの発がんの分子機構は未だにわかっていない。

正常細胞では細胞質のなかに細胞内タンパク質が存在しているが、とくに肝がん細胞でタンパク質の異常分泌(型破り分泌)が起きていることを発見した。そして網羅的なタンパク質の検索作業でPKCδを突き止めた。

分泌されるPKCδは、腫瘍形成に関わっていて、中和抗体によって腫瘍抑制効果も確認された。このことは、肝がんの分子標的薬への可能性を抱かせる大きな成果だ。

PKCδの発見が、肝がん患者さんへの診断・治療薬への開発に大きな前進になることを期待したい。

中和抗体=ウイルスや細菌に感染した場合、ワクチンを接種して抗体が産生される。ところが抗体は1種類でなく、感染抗原のあらゆる個所に免疫機能は認識し、その認識部位ごとに反応する抗体を作る。その中で抗原を失活させる、つまり病原性を抑える作用のある抗体を中和抗体という

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