がん悪液質治療薬の登場でがんサポーティブケアが変わる

[2021.07.07] 取材・文●「がんサポート」編集部

2021年6月7日、「がん悪液質治療薬の登場で変わる、がんサポーティブケア」と題した小野薬品工業株式会社主催のメディアセミナーが都内で、オンラインとオフライン同時に開催された。講演は、京都府立医科大学呼吸器内科学教授の高山浩一さんが務めた。

がん悪液質治療に初めての新薬エドルミズが登場

がん悪液質は、がんに伴う体重減少(とくに筋肉量の減少)や食欲不振などを特徴とする複合的な代謝異常症候群である。

がん悪液質は患者さんのQOL(生活の質)や予後などに悪影響を及ぼすことがわかってきたが、これまで国内では、がん悪液質の治療薬はなかった。

そんな中で、2021年1月にがん悪液質治療薬エドルミズ錠(一般名アナモレリン)が小野薬品工業株式会社より発売された。

アナモレリンは、新規の経口グレリン様作用薬。グレリンは、主に胃から分泌される内在的ペプチドで、グレリンがその受容体に結合すると、体重、筋肉量、食欲および代謝を調整する複数の経路を刺激する。アナモレリンは、がん悪液質の患者さんにおける体重および筋肉量の増加、食欲の増加効果を得られる。

髙山さんは、Tongji大学病院(中国)に入院していた進行がん患者390例のデータをもとに悪液質の有病率(がん種別)を挙げた。有病率の高い順から膵がん(88.9%)、胃がん(76.5%)、食道がん(52.9%)、肝・胆管がん(50.0%)などであった。

また、米国の4施設でカルテと検死解剖データが存在するがん患者500例から「がん患者の主な直接の死因」について、がん悪液質23%、肺臓炎14%、腎機能不全13%、腹膜炎11%などを示し、かなり高い率で、がん悪液質が直接の死因になっていると言及した。

さらに、高山さんは、「飢餓(栄養摂取量不足)」と「がん悪液質」の違いについて、体重、脂肪組織、骨格筋、炎症タンパクの合成、安静時エネルギー消費量について、それぞれ比較し、骨格筋の減少、炎症タンパクの合成増加、安静時エネルギー消費量増加を悪液質の特徴として挙げた。

「栄養と運動」が、がん悪液質の治療には重要

非小細胞肺がんに伴うがん悪液質患者(174例)を対象とした無作為化比較試験を実施。観察期間15日間でアナモレリン群84例、プラセボ群90例に分け12週間投与した。

結果は、除脂肪体重の比較において、アナモレリン群(1.38±0.18kg)、プラセボ群(−0.17±0.17kg)と明らかな有意差が示された(p<0.0001)。しかし、除脂肪体重増は認められたが、両群間の筋力(握力)の増加の有無に関して有意差は認められなかった。

この結果について髙山さんは、その理由の1つとして「筋肉を増加させてだけでは筋力はつかず、筋肉に負荷(運動)をかけることが大切」と運動の重要性を示唆した。

アナモレリン処方について、保険適用になるのは非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんの4つのがん種で、栄養療法等で効果不十分ながん悪液質の患者であること、6カ月以内に5%以上の体重減少と食欲不振があり、①疲労または倦怠感、②全身の筋力低下、③CRP値0.5mg/dL、ヘモグロビン12g/dL未満またはアルブミン値3.2g/dL未満のいずれか1つ以上ある、との条件が必要とされた。

最後に、「今後のがん悪液質に対する治療はチーム医療が重要であり、抗炎症、代謝改善、食欲改善などにはそれぞれ有効な薬物療法を併用しながら、良質の栄養療法と患者さんの身体機能に合わせた適切な運動療法を加えることで、骨格筋量の増加とともに、身体機能回復を目指すことができるのではないか」と高山さんは結んだ。

<アナモレリンについて> 体重減少・食欲改善の切り札、今年いよいよ国内承認か がん悪液質初の治療薬として期待高まるアナモレリン

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