イミフィンジ・イジュド併用療法の承認取得 肝細胞がんの新たな併用療法

[2023.05.01] 取材・文●「がんサポート」編集部

2023年4月4日、アストラゼネカ株式会社主催 イミフィンジ・イジュド承認取得セミナー「肝細胞がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の更なる可能性について」が開催されました。セミナーでは、千葉大学大学院研究院消化器内科学教授の加藤直也さんが、肝がんの最近の傾向や、新しく承認された薬物治療について解説しました。

非アルコール性脂肪肝が増加傾向

肝臓の働きは、大きく分けると3つ。1つは消化液の胆汁の産生、2つ目は栄養素(糖など)の貯蔵や放出。3つ目は、体内に入った毒素、薬物、アルコールなどの解毒・分解。肝臓は人体の科学工場とも言われています。

肝細胞がんの原因は、慢性感染症(B型、C型肝炎ウイルス)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性肝障害などがあります。

慢性感染症を起因するものは、近年、抗ウイルス薬が登場し減少していますが、その反面、非アルコール性脂肪肝の増加が目立っているとのことです。

肝細胞がんは、手術、経皮的ラジオ波/マイクロ波焼灼術、経カテーテル肝細胞塞栓術、薬物療法など、がんの進行具合によりさまざまな治療法があります。しかし、胃がん、肺がん、腎がんなどと大きく異なる点は、肝臓自体をすべて切除することはできないということです。

これまでの肝細胞がん薬物療法は、外科的切除、肝移植、局所療法、TACEなどが適応とならない進行例で、PS良好、Child-Pugh分類Aのケースでは、1次治療として、免疫チェックポイント阻害薬のテセントリク(一般名アテゾリズマブ)+アバスチン(一般名ベバシズマブ)併用療法、もしくはネクサバール(一般名ソラフェニブ)、レンビマ(一般名レンバチニブ)でした。

免疫チェックポイント阻害薬の作用機序ですが、腫瘍(がん)細胞は、免疫細胞(T細胞)の攻撃から逃れるためPD-L1というタンパク質を出し、これがT細胞の出しているPD-1に結合すると、T細胞の働きが抑制されてしまいます。

免疫チェックポイント阻害薬のPD-1抗体は、T細胞に結合してT細胞が抑制されないようにします。PD-L1抗体は、逆に腫瘍細胞に結合し、T細胞の働きが抑制されないようにする作用があります。

イジュドおよびイミフィンジの作用機序

2022年12月23日、切除不能な肝細胞がんに、イミフィンジ(一般名デュルバルマブ)+イジュド(一般名トレメリムマブ)併用療法が承認されました。

イジュドは、CTLA-4を標的とするIgG21モノクローナル抗体であり、CTLA-4がCD80およびCD86との結合を阻害することにより、T細胞の活性化、増殖の亢進などで抗腫瘍免疫応答性の増強をもたらします。

一方、イミフィンジは、ヒトPD-L1に対する1モノクローナル抗体であり、腫瘍細胞に結合して、抗腫瘍免疫応答を増強し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。

1モノクローナル抗体:1種類のB細胞から作られ、単一(モノ)の混じりっけのない(クローナル)抗体で、がん細胞にだけを攻撃する

肝予備能の保持が生存に大きく影響する

「HIMALAYA試験」では、切除不能な肝細胞がん患者さんを対象に、イミフィンジ+イジュド群(n=393人)とネクサバール群(n=389人)を対象として、全生存期間(OS)を比較。結果は、イミフィンジ+イジュド群では16.43カ月、ネクサバール群では13.77カ月と有意差が認められました。

注目されるのが、臨床試験における生存曲線の後半部分で、細胞障害性抗がん薬および分子標的薬の生存曲線が下がっているのに対して、免疫チェックポイント阻害薬は、テールプラトー現象で、生存曲線が下がらない状態を維持している点です(図)。

【図】

主な有害事象は、イミフィンジ+イジュド群では、下痢(26.5%)、そう痒症(22.9%)、発しん(22.4%)、ネクサバール群では、下痢(44.7%)、そう痒症(6.4%)、発しん(13.9%)でした。

まとめに加藤さんは、肝細胞がんは、治療選択肢が多く、肝予備能が生存に大きく影響を及ぼすので、シークエンシャル治療(増悪の前に薬剤を変更し、薬剤をローテートし、繰り返し投与)は、肝細胞がんの予後を改善すると結びました。

肝予備能:肝臓の機能がどの程度保たれているのかを示すもの

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