乳頭部がん術後のリンパ節転移。治療法は?

回答者:森実 千種
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2013年7月
更新:2013年11月

  

Ⅱ期ファーター乳頭部がんと診断され乳頭部切除術を受けました。半年後、MRIとCT検査をしたところ、リンパ節転移が見つかりました。今後、化学療法に入ると言われましたが、効果や副作用について教えてください。

(新潟県 女性 56歳)

A 進行胆道がんの治療を適用

ファーター乳頭部がんを始めとする胆道がん(胆管がん・胆のうがん・ファーター乳頭部がん)は、手術後の再発が少なくありません。

そのため、術後最初の5年くらいは3~6カ月ごとに血液検査やCT検査などの画像診断を行い、再発の有無を確認します。ただ、現在のところ、胆道がんに対する術後化学療法については行ったほうがよいという科学的な根拠がありません。

再発した場合は、切除不能と診断された場合と同様に、全身化学療法が用いられます。使う抗がん薬の種類は、「原発臓器がどこか」によって決まります。ファーター乳頭部がんは、胆道がんに分類されるため、進行胆道がんの標準療法であるジェムザール+シスプラチンの併用療法(GC療法)が第1選択の治療法となります。

ジェムザールの副作用には、白血球・好中球・赤血球・血小板の減少(骨髄抑制)、悪心、吐き気、嘔吐、食欲不振、倦怠感、じんましん、発熱、脱毛などが挙げられます。

吐き気や食欲不振は、抗がん薬点滴の前に吐き気止めを投与(前投薬)することで症状が緩和されます。前投薬にも種類があるため、吐き気や食欲不振がつらい場合は、主治医とよく相談して相性の良い前投薬を見つけてください。

白血球・好中球が減少すると、体の免疫力が弱まります。そのような時期に感染を起こし熱が出た場合などは、抗生物質で対応します。血小板が減ると、出血が止まりにくくなることがあります。

このような血液成分の減少は、自覚症状では察知ができないため、抗がん薬投与前日または当日に、血液検査を行います。ただし、血液成分の減少は、一過性のものが多く、通常は抗がん薬投与を中断すれば、数日で回復します。

ジェムザールによる副作用は、比較的軽度の場合が多いですが、著しいものとして間質性肺炎という呼吸器障害が挙げられます。これは、肺の間質に炎症が起こり、酸素が血液内に取り込まれにくくなる病態です。

患者さんには、空咳(痰の出ない咳)や高熱、息切れといった症状が現れます。急激に増悪する場合は命にかかわる場合もあるため、まれな副作用ではありますがその症状発現には注意が必要となります。

シスプラチンによる主な副作用には、骨髄抑制や吐き気、食欲不振といったジェムザールと共通するもの以外に、腎機能障害やしびれ、難聴などが挙げられます。

腎機能障害は、点滴や飲水によって水分を多めにとるようにするなどの対策が必要となります。しびれや難聴は長期間の投与で徐々に症状が悪化してくるのですが、抗がん薬投与を止めても簡単には改善しないことが多いため、症状がひどくなってしまう前にシスプラチンの使用を中止する必要があります。

切除不能または再発胆道がんは、TS-1という飲み薬の抗がん薬でも一定の効果が得られることがわかっており、なかでもジェムザール+TS-1の併用療法(GS療法)は治療効果の面でも期待されている治療法です。

シスプラチンのように腎臓を守るための水分点滴の必要がないなど、患者さんの負担も少なく利点も多いのですが、GC療法と比較してどちらがよい治療法なのかはわかっておらず、現在国内で両法の治療成績を比較する臨床試験が行われているところです。

ジェムザール=一般名ゲムシタビン シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

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