髄芽腫の髄液播種。どのような治療がよいか

回答者:林 基弘
東京女子医科大学 脳神経外科講師
発行:2011年9月
更新:2013年11月

  

9歳の息子のことでご相談です。息子は病院の精密検査で、小脳に3センチほどの髄芽腫が見つかりました。しかも、大脳にも転移しており、脳や脊髄を満たす髄液中に腫瘍細胞がちらばる「髄液播種」を起こしている可能性が高いといわれました。髄液播種を起こすと、予後がきわめて悪いそうで目の前が真っ暗です。主治医の先生は手術に加え、放射線治療と化学療法も受けるよう勧めています。この場合、どのような治療がベストでしょうか?

(千葉県 女性 38歳)

A 手術と放射線、化学療法を併用するのが妥当

髄芽腫はほとんどが14歳以下の子供が発病し、とくに5~9歳に好発する脳腫瘍です。患者数は非常に少ないのですが、悪性度が高いことで知られています。小脳や脳幹に多く発生し、早期に髄液播種を起こしやすいことも特徴。髄液播種を起こすと、循環する髄液に乗って大脳や脊髄に容易に転移します。こうなると、残念ながら根治の可能性はきわめて低いといわざるを得ません。

髄液播種を起こした髄芽腫については、まず手術で腫瘍を摘出し、そのあとで放射線治療、3歳以上のお子さんなら、さらに大量化学療法を行い、播種した腫瘍細胞を叩くのが標準的です。放射線は脳脊髄全体にまんべんなくかけます。ただし、がんの部位には強めに(50グレイ程度)、そのほかの部位には弱めに(25グレイ程度)といった具合にメリハリをつけます。大量化学療法では、オンコビン、エンドキサン、ブリプラチンなどの併用が多いです。

相談内容をうかがった限りでは主治医の意見や判断は妥当なようです。ただし、髄芽腫は症例が少ないうえに治療が難しい病気なので、医師の経験や診立てがものをいいます。小児脳神経外科医などの経験豊富な専門医がいる医療施設なら安心できます。時間的に余裕はないと思いますが、セカンドオピニオンなどをしっかり立て、落ち着いて信頼できる施設を選びましょう。

オンコビン=一般名ビンクリスチン エンドキサン=一般名シクロホスファミド ブリプラチン=一般名シスプラチン

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