下顎歯肉がんと診断。どのような手術になるのか不安

回答者・岸本誠司
亀田総合病院頭頸部外科部長
発行:2016年4月
更新:2016年7月

  

下顎歯肉がんと診断されました。がんの大きさは約2cmでステージはⅢ(III)です。「下顎の骨の一部を取る必要がある」と言われたのですが、どのような治療になるのでしょうか。

(65歳 男性 東京都)

手術が第1選択。進行すると骨の移植も

亀田総合病院頭頸部外科部長の
岸本誠司さん

大きさが2cmでステージⅢ(III)ということはリンパ節転移が見られるが、歯茎の骨にまでは進行していない段階です。

治療は、手術が第1選択となります。歯茎の一部である歯肉だけを取るのではがんを完全に取り切れないので、歯の根元にある骨も一緒に削ることになります。すでに顎の骨までがんが食い込んでいたら、ある範囲の骨をすっぽり取らなければなりません(区域切除)。

しかし、まだがんが骨に食い込んでいない段階なら、歯肉と接している部分だけ取って骨の一部は残すようにします(辺縁切除)。Ⅲ(III)期なら、頸部郭清術(頸部のリンパ節とその周辺の組織を切除する手術)をすれば転移したリンパ節は取り切れると思います。

辺縁切除は、歯茎と歯茎に接している骨の一部だけを取るもので、顎の骨は右から左までつながったままです。しかし、区域切除の場合は、がんのある範囲の骨をすっぽり取ってしまうもので残った左右の顎の骨はバラバラになってしまいます。その場合、左右に離れた顎の骨の間に何らかの橋渡しが必要となります。橋渡しをするものとしては、自分の足(腓骨)や肩甲骨の一部を持ってきて移植するか、チタン製の金属プレートを用いることになります。

手術をすると、歯や歯茎がなくなるわけですから、後はどのようにうまく歯を入れるかということになります。歯科の領域ですが、まずブリッジといって両側に残った健常な歯に橋渡しをするという方法が考えられます。しかし、両側に健常な歯がない場合はブリッジを架けることはできません。

その他には、インプラントという方法があります。骨が十分に残った場合に人工の歯根を植え付けて、その上に人工歯をはめ込む方法です。保険が効かないため1本30万円ほどからと高額ですが、「第2の永久歯」と言われるほどの装着感があります。

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