手術は成功。再発予防のため、抗がん剤治療を受けるべきか

回答者:池田 公史
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2007年8月
更新:2013年11月

  

副膵管(膵臓でつくられた膵液を十二指腸まで運ぶ管の1つ)に2センチ弱の腫瘍が見つかり、手術を受けました。手術は成功し、病変は切除できたようです。また、転移や浸潤も認められないということで、ひとまず安堵しています。しかし、再発を予防するため、ジェムザールか5-FUの抗がん剤治療を勧められています。この抗がん剤治療は受けたほうがよいのでしょうか。受けるとしたら、どちらの抗がん剤がよりよいのでしょうか。 また、再発を予防するメリットと副作用などのリスクとでは、どちらが大きいのでしょうか。

(和歌山県 男性 61歳)

A ジェムザールを受けるという選択肢もある

再発予防のためには、抗がん剤治療(化学療法)を行うのがよいのか、化学療法と放射線治療を併用するのがよいのか、または治療しないのがよいのかを明らかにするために、膵臓がん切除後の患者さんを対象として、大規模な無作為化比較試験がヨーロッパで行われました。その結果、化学療法を受けた患者さんが最も治療効果がよかったと報告されました。そして、その際に用いられた化学療法は、5-FU(一般名フルオロウラシル)が主体の治療方法でした。

その後、ジェムザール(一般名 塩酸ゲムシタビン)という抗がん剤が登場しました。ジェムザールは、切除できない膵臓がんに対して、5-FUよりも治療効果が高いことが明らかにされました。したがって、現在のところ、ジェムザールは、切除できない膵臓がんに対する第1選択の抗がん剤となっています。

最近、膵臓がんの切除術後に、このジェムザールで治療した患者さんと治療をしないで経過をみた患者さんを比べた無作為化比較試験が行われ、ジェムザールで治療した患者さんの再発までの期間が有意に長くなったと報告されました。ただし、患者さんの生存期間においては、有意な差が認められませんでした。

日本においても同様に、ジェムザールで治療した患者さんと治療をしないで経過をみた患者さんを比べた無作為化比較試験が行われており、その結果が近いうちに報告される予定です。したがって、現在のところ、外科切除後の再発予防としてジェムザールによる治療が期待されていますが、まだ標準的な治療として位置づけられたわけではありません。

以上により、膵臓がん切除後の補助療法として抗がん剤治療を行うのは、選択肢の1つとして考慮してもよいと思います。その際、使用される抗がん剤としては、現在では、5-FUよりもジェムザールによる治療が期待されています。

また、ご相談者が心配されるように、ジェムザールには副作用もあります。主な副作用は、食欲不振、倦怠感、腹部のむかつき、嘔吐、発疹、発熱、骨髄抑制(赤血球や白血球などの減少)、腎機能や肝機能の低下などです。一般的に、副作用は一過性でそれほど強くはないのですが、まれに間質性肺炎などの生命にかかわる重篤な副作用を起こすこともあります。

以上のことをお知りになったうえ、切除後の抗がん剤治療を受けるか受けないか、主治医と再度、相談されてみてはいかがでしょうか。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート5月 掲載記事更新!