患者会ももの木、院内患者会、そして……

文:田中祐次 東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門特任助教
NPO血液患者コミュニティ「ももの木」理事長
イラスト:杉本健吾
発行:2009年11月
更新:2013年4月

  
ももイラスト

たなか ゆうじ
1970年生まれ。徳島大学卒業。東京大学、都立駒込病院を経て、米国デューク大学に留学。
現在は東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門特任助教。
2000年、患者会血液患者コミュニティ「ももの木」を設立し、定期的な交流会を続けている

ももの木という患者会を始めたのは2000年のことでした。その頃は、医師が患者さんと一緒に、という発想は医療界では受け入れられなかったと思います。しかし、そういった集まりを作りたいと相談した患者さんから、「ぜひ!」といってもらうことができました。

ももの木は、とくに活動目的は作らず、唯一「集まること」、これだけを実行するというコンセプトで始めました。集まった人たちが1人でも温かい気持ちになれればいい、そう考えています。

イラスト

あるとき、一緒に患者会を始めた仲間がいいました。「先生、僕は入院している患者さんにも参加してほしい」と。驚きました。というのも、その発想が自分自身になかったからです。僕が企画する患者交流会の場所は居酒屋でした。でも、彼が企画したときは、病院のレストランでした。そこには入院中の患者さんに来てもらいたい、その気持ちがあったのです。では、と思い立ったのが「院内患者会」でした。すると、北陸地方に、10年以上活動している院内患者会が存在することを知りました。それが、石川県の萌の会、富山県のすずらん会でした。早速、萌の会やすずらん会に参加しました。院内で開催されているため、交流会に、入院患者さんや看護師さんなどが気軽に顔を出してくれていました。そして、医療者と患者さんや患者家族の方々が交じり合うことで、お互いの笑顔があふれていました。

あれから3年が経ちました。あるとき、院内患者会の会長の下に、ある患者家族の方から相談がありました。それは、半年以上も個室から出ることのできない若い男性に関する依頼でした。部屋が個室ということもあり、家族以外との交流がない。院内患者会を知った家族は、患者会の経験から患者さんに元気を出してもらうための手立てがないか、相談を受けました。会長は悩みながらも、1つのアイデアを思いつきました。今までの患者会は、日程と場所を決めて人に集まってもらいました。でも、入院患者さん、とくに個室にいる患者さんでは、患者会の場所まで出向くことができない。それならば、患者会という場が移動したらよいのだ、と考えたのです。病院側の許可を得て、会長と僕の2人で病院に行き、個室で患者さんと3人でおしゃべりをしました。わずか1時間でした。でも、無口な子ども、といわれていたにも関わらず、よくおしゃべりをしてくれました。

この出張患者会の効果を知ることはなかなか難しいと思います。でも、必要な人がいて、それを手伝える人がいれば、良い形で進めるのではないか、そう予感しています。患者会を始めてもうすぐ10年。居酒屋、院内患者会そして次に出張患者会。未来は続きます!!

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