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ほてり・発汗、疲れ、めまい、頭痛、手術後の関節痛などに高い改善率
乳がんホルモン療法の副作用を漢方療法で改善する

監修:戸井雅和 東京都立駒込病院外科部長
屠聿揚 東京都立駒込病院内科医長
取材・文:菊池憲一
発行:2006年2月
更新:2019年8月

  

戸井雅和さん
東京都立駒込病院外科部長の
戸井雅和さん
屠聿揚さん
東京都立駒込病院内科医長の
屠聿揚さん

アロマターゼ阻害剤の時代

写真:「乳がんについてもっと知ろう~ホルモン治療と副作用について~」シンポジウムでの光景

「乳がんについてもっと知ろう~ホルモン治療と副作用について~」シンポジウムでの光景

乳がんのホルモン療法では、ノルバデックス(一般名タモキシフェン)が普及し、長い間、大きな役割を果たしてきた。90年代後半、第3世代の新しい閉経後乳がんの経口治療薬としてアロマターゼ阻害剤が登場し、ノルバデックスに替わるものとしてすでに医療現場で使用されている。新しいアロマターゼ阻害剤は、アリミデックス(一般名アナストロゾール)、フェマーラ(一般名レトロゾール)、アロマシン(一般名エキセメスタン)の3種類だ。3つのアロマターゼ阻害剤は、閉経後乳がんの経口治療薬として術後補助療法に用いられて、優れた治療成績を示している。

東京都立駒込病院外科部長の戸井雅和さんは次のように述べる。

「術後補助療法にアロマターゼ阻害剤を用いた場合、欧米の大規模臨床試験ではアリミデックス単独のほうがタモキシフェン単独よりも明らかに再発抑制を得られることがわかりました。フェマーラについても同様の結果が近々発表される見込みです。アロマシンについては、タモキシフェンからアロマシンに切り替えた場合とタモキシフェン単独の場合を比較した臨床試験で、アロマシンを含む場合のほうが有意に再発抑制を得られることが報告されています。そこで、現在、閉経後乳がんの術後補助療法の標準治療は、アロマターゼ阻害剤となっています」

こうした臨床試験の結果、ノルバデックスを飲んだあと、その延長療法として、アロマターゼ阻害剤に切り替えて飲み続ける治療法も始まった。例えば、00年の手術後ノルバデックスを5年間飲んだあと、アロマターゼ阻害剤にスイッチして5年間飲み続ける。このことで再発抑制を図るというわけだ。乳がんの術後補助療法は、世界的にそうした治療に向かって動き出している。

アロマターゼ阻害剤の副作用

ただし、アロマターゼ阻害剤にはデメリットもある。アロマターゼ阻害剤は女性ホルモンを抑制する作用があるため、骨筋系の障害、循環器系障害、骨粗鬆症などを起こしやすいことがわかってきた。ノルバデックスについては、子宮がんを増加させるなどのデメリットが知られている。「世界的に見ると、乳がんのホルモン療法は、ノルバデックスからアロマターゼ阻害剤にシフトしていますが、同時にその副作用対策も重要となってきました」と戸井さん。

そこで、05年10月、同病院では「ホルモン治療に関するアンケート調査」を行った。その調査結果が下の図である。乳がんのホルモン療法に関する調査は欧米ではたくさん報告されている。しかし、日本人を含むアジア人ではまとまったデータはまだないという。この調査では2つの目的があった。

「1つは、日本人は大豆や小魚など骨によいと言われる食事をしています。また、畳での生活も骨にはよいとされています。欧米と比べて本当によいのかどうか知りたかったのです。もう1つは、体重の増加についてです。これまで注目されていなかった部分についてスポットを当てました」(戸井さん)

この調査の結果、ホルモン療法の副作用については欧米での報告とほぼ同様だった。また、体重については2キログラム増加が約30パーセント、4キログラム以上の増加が約10パーセントとやや多いこともわかった。逆に4キログラム以上の体重減少も5パーセントほどあった。3つのアロマターゼ阻害剤の副作用の内容は多少違うが、大きな差はないという。

ところで、今回のアンケート調査で明らかになったホルモン療法によるさまざまな副作用に対して、西洋医学による改善はかなり難しいようだ。そこで、戸井さんは、同病院内科で漢方医学を得意とする屠聿揚さんの協力を得て、ホルモン療法による副作用の改善、軽減に取り組んでいる。

[副作用の程度(副作用があると答えた方の解答)]
図:副作用の程度
[体重の変動]
図:体重の変動
[ホルモン治療内容]
図:ホルモン治療内容

抗エストロゲン剤(ノルバデックス、タスオミン、フェアストン)
LH-RHa(ゾラデックス、リュープリン)
アロマターゼ阻害剤(アリミデックス、アロマシン)

[ホルモン治療内容と副作用の有無]
図:ホルモン治療内容と副作用の有無

ホルモン治療に関するアンケート調査(都立駒込病院2005年10月、解答者101名)

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