髄液にがんが転移。もう打つ手はないのか
昨年(2014年)の6月に背中が痛み、肺がん(肺腺がん)の末期と診断され、放射線治療で背中の痛みは消えました。その後、抗がん薬治療(*シスプラチン+*アリムタを4回、アムリタのみを2回、*タキソテールを2回)を受けました。4月中ごろより足にしびれが出始め、急速に歩行が困難になってきました。5月中ごろより放射線治療を13回受けましたが治らず、6月初めにまったく歩けなくなってしまい、入院しました。主治医より脊髄の髄液の中にがんが転移しているため、余命1~3カ月との宣告を受けました。現在治療は行われず、緩和ケア病棟に入院していますが、食欲が徐々になくなり、水分とのど越しのよい果物のみをとっています。もう打つ手はないのでしょうか。遺伝子変異のないタイプです。
(62歳 女性 茨城県)
A できることをして、有意義な時間を
センター長の久保田 馨さん
お便り拝見しました。歩行が急速に困難になられたとのこと、大変におつらい状況であるとお察しします。これまでの治療では様々な副作用もご経験なさったでしょうが、よく頑張ってこられたと思います。現在のご病状ですが、脊髄への転移による神経の障害のために足が動かない状況なのだと思います。遺伝子変異のないタイプとのこと、現在の体力の状況を含めて考えますと、今後の治療についても担当医のご判断通りだと思います。
精神科医であり、ナチス収容所から生還したビクトール・フランクルの著書に次のような話があります。フランクルがある病院に勤務していたときのことです。当直のとき、脊髄がんのために入院していた若い男性患者に呼び止められてこう言われます。「モルヒネを今打ってください」と。フランクルがその理由を尋ねると「午前中の回診のとき院長は、最期のときはモルヒネで苦しみをとりましょうと言っていました。私は今晩だと思います。深夜に当直のあなたを起こすのは申し訳ないですから、今のうちにお願いします」とのことでした。フランクルは最期のときも周囲への配慮を忘れない彼の行動を「人間として素晴らしい業績だ」と書いています。
このようなお手紙をお書きいただいたことも多くの患者さんたちへの参考になったことでしょう。今の状況でも、あなたのできることをして、有意義な時間をお過ごしいただきたいと思います。
*シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ *アリムタ=一般名ペメトレキセド *タキソテール=一般名ドセタキセル