化学療法と放射線はともに必須?副作用が心配

回答者・古賀文隆
都立駒込病院腎泌尿器外科医長
発行:2015年2月
更新:2015年12月

  

セミノーマの精巣腫瘍で、転移があると診断されました。全摘手術に加えて、化学療法と放射線療法が有効と言われました。これらをすべてしなければならないでしょうか。BEPという治療法は有効でしょうか。有効性と副作用の兼ね合いがとても心配で悩んでいます。

(67歳 男性 愛知県)

転移先によって治療を選択 副作用が少ない薬剤選択も

都立駒込病院腎泌尿器外科医長の
古賀文隆さん

精巣腫瘍は、セミノーマ(精上皮腫)と、それ以外の非セミノーマ(非精上皮腫)に分類されますが、ともに精巣摘除術は必須です。セミノーマでは化学療法と放射線療法の両方が有効ですが、非セミノーマでは放射線療法の効果が低いという特性があります。セミノーマのほうが治療成績は良好で、転移があっても過半数で完治までもっていけます。

相談者は、転移を指摘されました。セミノーマですから化学療法や放射線療法で高い効果が得られます。といっても、両方が必要というわけではありません。治療はどこに転移があるかにより異なります。

転移にはリンパ性と血行性があります。リンパ性で後腹膜リンパ節(お腹の大血管の周りのリンパ節)だけにとどまる場合は、放射線療法または化学療法のどちらかが標準治療となります。血行性で肺や肝臓、骨などの臓器に転移した場合は化学療法が基本となります。

化学療法は、ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの3剤併用であるBEP療法が標準となります。ブレオマイシンには肺線維症による呼吸不全という重篤な副作用があるので、呼吸機能を定期的にチェックしていく必要があります。

BEP療法の副作用が心配な場合は、転移病巣が後腹膜リンパ節のみであれば、放射線療法の選択肢があり、転移病巣が肺だけであれば、弱い抗がん薬でも十分なのでブレオマイシンを除いたEP療法という選択肢もあります。

さらにセカンドラインの治療としてVIP療法もあります。肺毒性のあるブレオマイシンを使わない方法で、エトポシド、イホスファミド、シスプラチンの併用です。これも保険適用で、患者さんの身体状況によっては1次治療で使用することもあります。医師と相談の上、治療選択されることをお勧めします。

BEP療法=ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチンの3剤併用療法 ブレオマイシン=商品名ブレオ エトポシド=商品名ラステット/ベプシド シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ EP療法=エトポシド+シスプラチンの2剤併用療法 VIP療法=エトポシド+イホスファミド+シスプラチンの3剤併用療法 イホスファミド=商品名イホマイド

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