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第2回 フコイダンの作用の仕組み

ガゴメ昆布「フコイダン」は腸管を直接刺激して免疫力を高める

【閲覧制限なし】
取材・文●田中 博
発行:2015年10月
更新:2016年1月

  

タカラバイオ研究チームリーダー
の大野木 宏さん

フコイダンは昆布、ワカメ、モズクなどの海藻類に含まれるネバリ成分である。タカラバイオの研究グループは、世界で初めてガゴメ昆布「フコイダン」の構造と機能性の解明に成功し、ガゴメ昆布のフコイダンが他の海藻類と大きく異なることを明らかにした。ガゴメ昆布「フコイダン」にはがん細胞の増殖を抑制する作用やウイルス感染を抑制する作用などがあり、これらの作用は免疫力を高めることによると考えられている。今回は、ガゴメ昆布「フコイダン」の作用の仕組みについて解説してもらった。

免疫力を高めることにより がん細胞の増殖を抑制

■図1 ガゴメ昆布「フコイダン」のNK細胞活性化作用

ガゴメ昆布「フコイダン」の経口投与によって、腫瘍体積が減少し、さらにこの時、脾臓のNK活性が増加していた

タカラバイオの研究グループは、ガゴメ昆布「フコイダン」に、さまざまな作用があることを明らかにしているが、とりわけがん細胞の増殖を抑制する作用に注目している。

がん細胞を移植したマウスにガゴメ昆布「フコイダン」を含む飼料を与えると腫瘍の増殖が抑えられ、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性が高くなった(図1)。

同様の実験は、ワカメメカブやオキナワモズクから抽出したフコイダンを含む飼料も用いて行ったが、腫瘍増殖を抑える作用もNK細胞を活性化させる作用も、ガゴメ昆布「フコイダン」を含む飼料を用いた場合のほうが高かった。

NK細胞は自然免疫(カコミ参照)に重要な役割を果たす細胞であり、体内を巡回していてがん細胞を発見すると攻撃し、がんの芽を摘み取る働きもあるといわれている。このことから、ガゴメ昆布「フコイダン」は、免疫力を高めることにより、がん細胞の増殖を抑制することが示唆された。

免疫力を高める作用は、がん細胞増殖抑制だけでなく、ウイルス感染抑制など他の作用にも大きな役割を果たすと考えられている。

<免疫:生物が自らを防御するための仕組み> ヒトを含む生物には、細菌やウイルス、寄生虫のような病原体、あるいはがん細胞などの異常な細胞を排除して、自らを防御するための仕組みが備わっている。この仕組みこそが免疫である。免疫は自然免疫と獲得免疫に大別される。このうち自然免疫は生まれつき備わっており、獲得免疫に先行して作用する仕組みで、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞などが中心的役割を果たす。一方、獲得免疫は後天性免疫ともいわれ、T細胞やB細胞が中心的役割を果たす。近年、自然免疫が獲得免疫の誘導に重要な役割を果たすことも明らかになっている。

フコイダンの作用には 硫酸基や高分子が重要

フコイダンは、天然界ではとても珍しい「硫酸基」をたくさんもつ高分子の多糖類である。こうした特徴的な構造と機能性の関係も明らかになってきた。

ガゴメ昆布「フコイダン」にはオキナワモズク「フコイダン」の約5倍の硫酸基が含まれるが、硫酸基が多いほど、がん細胞の増殖を抑制する作用が強く、NK細胞活性を増強させる作用も強いことが明らかにされている。

フコイダンは、それを構成する硫酸基が水になじみやすいため、水を抱えやすい。硫酸基が多いほうが水を抱える力が強く、このことがガゴメ昆布「フコイダン」のネバリの強さにも関係すると考えられている。

また、高分子であることも機能性と密接に関係する。マウス脾臓細胞を用いた細胞実験では、高分子のガゴメ昆布「フコイダン」を添加するとNK細胞活性が高くなった。ところが、ガゴメ昆布「フコイダン」を酸加水分解した低分子フコイダンを添加してもほとんど活性は認められなかった。

このことからフコイダンが作用をするには高分子であることも重要と考えられている。一部には、低分子のフコイダンのほうが腸管から吸収されやすいため効果を期待できるという考え方もあるが、この結果をみる限り、その可能性は低いと考えられている。

タカラバイオ調べ

腸管を直接刺激して NK細胞を活性化

■図2 ガゴメ昆布「フコイダン」の免疫増強メカニズム

経口摂取したガゴメ昆布「フコイダン」はパイエル板を刺激してIFN-γの産生を高め、NK細胞を活性化することで全身免疫を上げると考えられる

では、ガゴメ昆布「フコイダン」は、いかにしてNK細胞を活性化し、免疫力を高めるのだろうか。ガゴメ昆布「フコイダン」は高分子であり、これを分解して低分子化する腸内細菌も見つかっていないため、腸管から吸収される可能性は低い。

しかし、ガゴメ昆布「フコイダン」を摂取すると免疫力が高まるのは事実である。これをどう説明するか。タカラバイオの研究グループはこの点についても検討した。

腸管、とくに小腸には免疫細胞が密集しており、全身の免疫細胞の60~70%は腸管にあるともいわれる。研究グループは、ガゴメ昆布「フコイダン」を摂取させたマウスでは、腸管のパイエル板という免疫細胞が集まっている部分が活性化していることを明らかにした。

また、NK細胞が働かないようにしたマウスでは、がん細胞を移植した後に、ガゴメ昆布「フコイダン」を摂取させても、腫瘍の増殖が抑えられないことを確認し、そのがん細胞増殖抑制作用にNK細胞の活性化が欠かせないことを示した。

これらの実験結果を踏まえて研究グループでは、経口摂取されたガゴメ昆布「フコイダン」が腸管を通過するときにパイエル板を直接刺激して、NK細胞を活性化し、免疫力を高めるのではないかと考えている(図2)。硫酸基を多く含むことや高分子であることがフコイダンの作用に重要であるのも、それによって、腸管に十分な刺激を加えられるためと考えている。

<続きは2月20日過ぎに掲載予定です>

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