進行性食道がん ステージⅢ(III)と告知されて そして……

「イナンナの冥界下り」 第7回

編集●「がんサポート」編集部
(2017年2月)

遠山美和子さん(主夫手伝い)

とおやま みなこ 1952年7月東京都生まれ。短大卒業後、出版社勤務を経て紳士服メーカー(株)ヴァンヂャケットに入社。約20年勤務の後、2011年8月病気休職期間満了で退職

<病歴> 2010年10月国立がん研究センター中央病院で食道がんステージⅢ(III)を告知される。2010年10月より術前化学放射線療法を受けた後、2011年1月食道切除手術を受ける。2015年9月乳がんと診断され11月に手術、ステージⅠ(I)で転移なし。2016年8月卵管がんの疑い。9月開腹手術。卵管がんと確定し、子宮・卵巣・卵管と盲腸の一部を摘出。9月手術結果を受け卵管がんステージⅢ(III)Cと診断。10月17日よりドース・デンスTC療法を開始


10月27日乳腺外科K先生外来。一連の検査結果を踏まえて病状の説明を受ける。非浸潤性乳管がん、転移は認められず、病期は0期。ではあるが、部分切除の場合、術後に放射線治療を行うため、通院など身体への負担を考慮して左乳房全切除が良いのではないかとの提案だった。

手術時間は3時間、センチネルリンパ節生検を行い、約10日入院の予定とのこと。用意した眼科の診療情報については、前日の高眼圧事件の記載や一部情報が不十分でダメ出しを食らい、再度麻酔科回診日までに「麻酔OK!」の明確な記載を指示された。

全切除手術については通院時間や少なからず出るであろう放射線治療の副作用も考え、すでに潔くK先生の少林寺拳法(幼少のころから習っている達人らしい)でバッサリやっていただこうと考えていたので、食道外科のG先生、そして精神腫瘍科O先生には「全摘しようと思います」と申し上げる。

おふた方とも「食道の時と比べたらそんなに大変じゃないよ」と軽い感じ。

O先生には弱音「手術は軽く済むと思うんですが10日も入院しなくちゃならないんです、10日間も食事どうしたらいいのか……、」

「食事のことは次回K先生にお話して、栄養士さんにも相談できるし、10日なんてあっという間ですよ」

「でも、10日もぉウジウジ」

「大丈夫、手術は受けられますね、それまでの薬は処方しておきます。入院したら病棟にも出向きますから安心して」

恥ずかしながら、か弱き乙女のごとき乳がん患者。

遠山さんのご主人が西千葉のギョラリーで昨年木工作品展を開催したときの漆仕上げの器

九十九里浜の白子海岸から3㎞ほど入った田んぼの中で椅子などの注文家具を創作している遠山さんのご主人の工房

「私、脱ぐとスゴイんです」

翌日の眼科診察では眼圧も安定しており、単刀直入な診療情報は郵送をお願いして何とか落着。次の麻酔科回診に備える。

食道がん初診から5年の間にいろいろな点で病院改革?が進み、パジャマのレンタルが始まり、差額ベッドの実質値上げ、診療代のクレジットカード払い→これはカードのポイントが貯まるので嬉しい。

そして、より厳しくなったといわれる難関の麻酔科回診が9日に待ち受ける。9日は連れ合いを伴って手術についてK先生との面談、手術日は11月26日木曜日午前中、K先生が出張の前に済ませてくださるとのこと。

「術後、僕はいなくなるけどチームで見るから心配しなくて大丈夫」

その後、麻酔科へ。緑内障については特段の指摘はなく先生からいくつか質問を受ける。食道の病歴から「平面に仰向けになれますか?」

「家では常に上体を少し起こして休みますが、病院の検査などでは問題なくできています」「日常生活で何か問題がありますか?」

「食事が少量ずつ頻回なのでそれがちょっと問題というか大変です」

脇から連れ合いが「その食事の支度は私がします」

「まぁ問題っちゃ、うちではそれが問題です」と私。

先生もちょっと笑ってくださって、全身麻酔同意書にサインし、「麻酔の手引き」の冊子をいただいて、つつがなく麻酔科終了。

入院までの間はどこも痛いところがあるわけで無し、気分的には安定してきていたので、入院中の朝食はパン食にしてもらおうとか持ち込む間食は何にするかとか、専ら手術の心配より、いかに10日間の食事を乗り切るか、ばかり考えていた気がする。

検査の合間に月2回開催されている「乳がん術後ボディイメージ教室」にも参加してみた。乳腺外科の先生が術前術後の写真を例示して色々説明してくださる。

その後、形成外科の先生による乳房再建についてのこれも写真を交えての術式や費用など詳細な説明、相談支援センタースタッフによる、術後・放射線治療中の下着や医療費公的補助のお話など、とても参考になるものだった。やはり予備知識なしにいきなり自分の術後の胸を直視するのは、たとえどんなにきれいに仕上がった傷痕でも厳しいと思う。

私が受けた食道摘出・再建手術は腹腔・胸腔鏡下だったので傷はほとんど目立たないが、2割体重の減った自分の裸体に落胆することはしばしばである。でも心配してくださる方には「うふっ、私脱ぐとスゴイんです❤」と申し上げることにしている、嘘ではない。

かなりタイトにスケジュールが入っている

11月上旬、「支える会α」の拠点がある西千葉のギャラリーで毎年連れ合いが木工の作品展を開催した。例年はαの皆さんに特段お知らせしていなかったが、その年は「今度は乳がんになっちゃいました」のご報告を兼ねてちゃっかりメールで展示会のご案内もさせていただいた。

気功の会の皆さんからは沢山の励ましメールとアドバイスと、そしてわざわざギャラリーまで足を運んでくださる方、お手紙をくださる方、気功教室の日には私の手術成功のため皆さんで気を1つにして送ってくださった。昔から「同病相憐れむ」というが、私は憐れまれたりしてないし、みんな相憐れんだりしているのではなく、がんを患った人は日々「もののあはれ」をより深く感じながら生きているのだと思う。

予定していた手術日のちょうど1週間前、入院課より25日(手術日前日)入院確定の連絡が来る。ついで、なくてもよかった入院前日の追加連絡、「5,400円の差額ベッドです」と。

11月25日10:30、今回も入院書類の「身の回りの世話をお願いする人」欄に書かれてしまった義姉に付き添われ入院。4度目とはいえ、4年10カ月ぶりの手術のための入院である。どこぞのお偉いさんの雲隠れ入院ほどお気楽ではいられない。手術前日と言っても明日に備えてゆっくり休んでくださいという訳にはいかず、かなりタイトにスケジュールが入っている。

事務方から病棟内の説明、午後は病棟担当のZ先生より手術・輸血についての説明、センチネルリンパ節同定のためのRI検査が1:30と4:30の2回、併せて手術部位の超音波下マーキング。Z先生は私の些細な質問にも丁寧に答えてくださり、「G先生の手術を受けられたんですね」と話題も振ってくださる私の好みのタイプ、いや容姿じゃなくてノリが。

夕方5時までにシャワーを浴びる、麻酔科の先生と手術室の看護師さんがそれぞれ説明に見える。看護師さんから手術直後に必要なT字帯・バストバンドを購入しておくよう指示される、栄養士さんと食事の相談。食事の合間におやつを食べ、夜のおやつも特別に遅い時刻まで許可していただく。思い出すだに忙しい。慌ただしかったがやはり寝付けず眠剤を追加してもらう。