アスベスト(石綿)健康被害者よ、救済の道を知って!
認定されれば、これだけの医療費、療養手当等が支給されます
アスベスト(石綿)による健康被害といわれる中皮腫や肺がんが年々増えています。
この被害者たちを支援する支援制度があるのをご存じですか。1つは労災保険制度ですが、この補償を受けられなくても、もう1つ救済される制度があります。
8割以上が建材に使用された
あなたはアスベスト(石綿)による健康被害を受けていませんか。
もしかつてアスベストを吸引した恐れがあり、現在、それがもとで中皮腫や肺がんになったり、あるいはすでに死亡された方の遺族の方がいれば、労災補償制度等の対象にならなくても、医療費、弔慰金等の救済給付が受けられます。これは、平成18年3月27日に「石綿による健康被害の救済に関する法律」が施行されたことによるもので、環境省や独立行政法人の環境再生保全機構が呼び掛けていますので、その環境再生保全機構や環境省地方環境事務所、近くの保健所に相談に行ってみてはいかがでしょうか。
アスベストは、天然にできた鉱物繊維で、「せきめん」とも「いしわた」とも呼ばれます。さまざまな種類がありますが、極めて細い繊維からできていて、熱や摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っていることから、建材や摩擦材、シール断熱材といった工業製品に使用されてきました。わが国で使用されるアスベストの大半は輸入によるもので、これまでの輸入総量は1000万トンにも上ります。とくに1970年から90年にかけては年間約30万トンずつも輸入され、その8割以上は建材に使用されたといわれます。
30~50年の潜伏期間を経て発症
しかし、1970年代ごろから、アスベストを大量に吸い込むと人体に有害であることが指摘されるようになりました。前述したように、アスベストは極めて細い繊維であるため、飛散すると空気中に浮遊しやすく、吸引されてヒトの肺胞に沈着しやすいのが特徴です。
この体内に長く滞留したアスベストが要因となって、肺で線維化が起こったり、中皮腫や肺がんなどの病気が引き起こされたりすることがあります。
アスベストが長期間滞留すると、炎症が起こり、肺の組織が傷つけられ続けることで線維化が起こります。また、発生する活性酸素によりDNAが傷つけられる結果、遺伝子に異常が起こって細胞のがん化が起こると考えられています。ただ、中皮腫などのがんが発症するには、30~50年という長い潜伏期間を経て起こるとされています。
アスベストは細くて長いものほど有害性が高くなるといわれています。肺の中に入り込んだアスベストは、体内の白血球の一種であるマクロファージ(大食細胞)により排除しようとされますが、長い繊維だと排除されにくく体内に長く留まるためと考えられています。
また、吸い込んだアスベストの量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められています。しかし、どのくらいの量を、どのくらいの期間吸い込めば中皮腫や肺がんになるかということまではまだ解明されていません。
救済給付の支給を受けるには
では、このようなアスベストによる健康被害を受けた方および遺族の方が冒頭のような救済給付を受けるにはどうしたらいいでしょうか。
まずは、自分がそうした病気に当てはまるのかどうかを確かめる必要があります。アスベストを吸い込んだ可能性のある方で、息切れがひどくなったり、咳や痰が以前よりも増えたり、胸や背中の痛みが消えなかったり、激しい動悸がしたり、顔色が悪かったりなどの症状があれば、近隣の労災病院のアスベスト疾患センター等の専門医療機関で相談してみてください。
救済給付の内容と給付額について記しておきます。
がんを発症し療養中の方の場合、医療費、療養手当、葬祭料が支給されます。医療費は自己負担分が療養開始日から支給されます。ただし、認定申請日の3年前よりの医療費については支給されません。
療養手当は、月約10万円が療養開始日または認定申請日の3年前の日が属する月の翌月から、療養等が不要になった日が属する月まで支給されます。
葬祭料は約20万円。療養中の方が死亡した場合、葬祭を行った方に支給されます。
遺族の方には、特別遺族弔慰金280万円、特別葬祭料約20万円が支給されます。平成18年3月26日以前(法施行前)に死亡した方および平成18年3月27日以降に認定の申請をしないで死亡した方の遺族に対してです。ただし、法施行前に死亡した方の遺族の請求期限は平成24年3月27日までで、法施行後に認定しないで死亡した方の遺族の請求期限は死亡後5年以内です。
こうした救済給付の支給を受けるに当たっては、審査があり、アスベストによる疾患(中皮腫と肺がん)であることの認定が必要となります。
認定には、申請者の戸籍の抄本、戸籍記載事項証明書などのほかに、医師の診断書や病理組織学的検査報告書などが必須です。詳しくは、環境再生保全機構(フリーダイヤル0120-389-931)や環境省地方環境事務所、近隣の保健所で聞いてみてください。