がん看護専門看護師 山田みつぎの

副作用はこうして乗り切ろう!「抗がん薬治療中の口内炎」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
(2015年5月)

がん看護専門看護師の
山田みつぎさん

抗がん薬、分子標的薬、放射線治療による副作用対策のポイントを、がん化学療法認定看護師、がん看護専門看護師の山田みつぎさんが、看護師の視点から紹介します。第1回目は、抗がん薬治療中によく起こる口内炎のセルフケアについてです。

やまだ みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長。2006年日本看護協会がん化学療法看護認定看護師認定。11年聖隷クリストファー大学大学院博士前期課程修了(看護学修士)。同年、がん看護専門看護師認定。13年より現職。日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本看護研究学会所属

口内炎はなぜ起きるの?

原因は大きく分けて2つあります。1つは、抗がん薬の種類にもよりますが、治療を始めて2~3日すると、口の中や喉が乾いたり、唾液がネバネバする、喉がヒリヒリ痛むといった症状が現れることがあります。これは、体の中を巡った抗がん薬が、唾液中にしみだして口の中に溜まってくるためと言われています。放っておくと、粘膜に影響を及ぼし、荒れて赤く腫れたり、ただれて潰瘍になることもあります。これが抗がん薬治療による直接的な口内炎です。

このタイプには、唾液にしみ出してくる抗がん薬をできるだけ薄めたり、吐き出すこと、つまり、うがいです。水やぬるま湯、塩水などで、とにかく回数多く行うことが大切です。

もう1つは、抗がん薬の投与後、10~14日ほど経ち、血液中の白血球や好中球という成分が減るときに生じる口内炎です。白血球や好中球は、細菌をやっつける働きがありますから、減少すれば口腔内の細菌が増えてしまい、感染が生じて口内炎となるのです。

いづれも、症状が強くなると、痛みで食事もとれなくなることがあり、体力低下はもちろん、イライラや不眠など精神的苦痛も伴ってきます。

とはいえ、口内炎は、あらかじめ対策を講じることで、ある程度の予防ができる副作用です。それを知って、抗がん薬の治療前からぜひ予防を心がけてほしいです。

とにかく「うがい」を

■図1 口腔内の菌量の1日の変化

口内炎の予防の基本は、とにかく「うがい」です。うがいは食前食後、睡眠前と起床時、を基本に、できれば2~3時間に1度を目安にしてください。睡眠中はしかたありませんが、夜中、トイレに起きたときは、手を洗うついでにうがいもしましょう。

そんなに?と思われるかもしれませんが、これには理由があります。

口の中には常にたくさんの細菌(常在菌)がいますが、粘膜が損傷すると、これらの菌に感染しやすくなります。そこで、うがいをして口の中の細菌を減らすことが大事なのです。

さらに、ここでもう1つポイントとなるのが、殺菌成分をたくさん含む「唾液」です。口内炎を防ぐためには、唾液分泌を促すことも効果的な方法といえます。

では、どのタイミングでうがいをするとよいのでしょう。それは、口の中の細菌量の変化を知るとわかります(図1)。

食事をするとたくさん唾液が分泌されるので、口腔内の細菌が減り、その後、時間が経つと細菌は徐々に増え、また食べると唾液が分泌されて細菌が減り、を繰り返します。

そして、唾液分泌が極端に少ない睡眠中は、口腔内が乾いて、どんどん細菌が増えます。つまり、菌がいちばん多いのは起床時なのです。ですから、朝起きたら、まずうがい。これで菌をグッと減らします。

そこからまた徐々に細菌が増えるので、朝食前にうがいをして、口の中をきれいに洗います。食事をとると唾液が出て菌が急減。けれども、30分ほど放置すると、歯や粘膜に残った食べかすから細菌がまた増え始めるので、食後は歯磨きとうがい。これを、昼食時や夕食時にも続けます。そして、夜中から起床時にできるだけ口腔内の細菌を増やさないために、トイレに起きたら、ついでにうがい!となるのです。

抗がん薬治療前に口内トラブル解消を

また、虫歯や歯槽膿漏、歯肉炎があると、口腔内は常に細菌が増えやすい状態になりますから、こうした口腔内トラブルは、抗がん薬の投与前に治療をすませておいてください。抗がん薬の影響で白血球が下がったり、免疫力が落ちたりすると、そこから感染して口内炎を引き起こしてしまいます。

ですから、抗がん薬の投与を始める時点で口腔内にトラブルがある場合は、前もって私たち看護師や医師に伝えてほしいのです。口の中の細菌を減らして炎症を抑えるうがい薬を予防的に使うなど、何かしらトラブルを少なくする方法を考えることができると思いますので。