グレード3の乳がん。術後療法の選び方は?

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
(2011年3月)

浸潤性乳管がんで乳房温存手術を受けました。がんの大きさは1.5センチ、範囲は5センチでした。病理検査ではグレード(悪性度)3、リンパ節転移なし、ホルモン感受性陽性、HER2陰性と判定され、化学療法+ホルモン療法か、ホルモン療法を受けたほうがいいといわれました。放射線療法も勧められています。私は仕事を持っており、副作用のことなども考えると、術後の治療に踏み切れずにいます。術後療法の選び方についてアドバイスをお願いします。

(茨城県 女性 50歳)

A 放射線療法を行うのが鉄則。グレード3なら全身療法も行うべき

結論から申し上げると、ご相談者の場合はまず、乳房温存手術を受けているので、術後の放射線療法を行うのが鉄則です。また、グレード3ということなので、術後全身療法も行うべきでしょう。化学療法とホルモン療法の併用が望ましいのですが、場合によってはホルモン療法のみを選択してもいいかもしれません。

放射線は通常、5週間毎日照射します。通院が必要ですが、1回当たりの照射時間は数10秒と短時間なので、半日休めれば、十分仕事をしながら治療を受けられます。

ホルモン療法では閉経しているかどうかで異なりますが、アロマターゼ阻害剤や抗エストロゲン剤を使うのが一般的。アロマターゼ阻害剤とは、女性ホルモン(エストロゲン)を作り出す体内酵素の働きを妨げる薬、抗エストロゲン剤とは、エストロゲンががん細胞に取り込まれるのを妨げる薬です。ホルモン剤は経口で5年内服するのが原則です。頻繁な通院は必要なく、重い副作用もないので、仕事を続けても支障はありません。

一方、化学療法(HER2陰性の場合)では、TC療法、FEC療法など、いくつかの抗がん剤を組み合わせた併用療法を行います。外来通院で通常、3週間に1回の治療を4~6クール行います。しかし、白血球減少や脱毛といった副作用は付き物で、症状が重ければ、安静が必要になるケースもままあります。

化学療法を受けるなら、体調に応じて休暇を取れることが前提と考えたほうがいいでしょう。仕事の都合上、どうしても休暇が取れない場合、化学療法を省略するしかないのですが、再発のリスクが高くなることを覚悟しなればなりません。お仕事のくわしい内容がわからないため、お答えしにくい部分もありますが、数日間の休暇の取得が可能で、仕事のやりくりがつくようなら、ホルモン療法と化学療法の併用をお勧めします。

HER2陰性=HER2は細胞の増殖を促す受容体で、HER2陰性とは乳がんなどの細胞にHER2が少ないこと

TC療法・FEC療法=TC療法はタキソテール(一般名ドセタキセル)+エンドキサンの併用療法。FEC療法は5-FU+ファルモルビシン(一般名エピルビシン)+エンドキサンの併用療法