糖尿病などの持病が。手術後の抗がん剤治療は?

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
(2008年3月)

2007年の初めに大腸がんとリンパ節を切除する手術を受けました。本来なら抗がん剤治療を行うようですが、腎臓を悪くするらしく、行っていません。糖尿病の合併症があり、糖尿病や高血圧症などの薬を服用しています。医師から再発しやすいといわれており、とても不安です。もし再発した場合、手術後に抗がん剤治療をやった人と私のようにやらない人とでは、再発・転移の状態は、やらない人のほうがよりひどくなるのでしょうか。たとえば、より多くの場所に転移するとか、より多くのがん細胞ができてしまうといったことはあるのでしょうか。ちなみに、もし再発・転移しても、高齢で持病もあるため手術はできず、緩和のための抗がん剤治療を行うといわれています。再発前に抗がん剤をぜひやってほしかったのですが、やってもらえませんでした。

(栃木県 女性 70代)

A メリットとデメリットを勘案して決める

大腸がんの手術後の補助化学療法(補助的に行う抗がん剤治療)は、基本的には3期、すなわちリンパ節転移のある患者さんに対して行われ、その場合、生存率の改善が期待できます。

質問文には「リンパ節を切除した」と書かれていますが、リンパ節転移の有無は不明です。もしリンパ節転移がなかったのであれば、抗がん剤治療の適応はありません。リンパ節転移のない状態で抗がん剤治療を行っても、生存率が向上するメリットは小さいと考えられています。

リンパ節転移があった場合は、手術後の抗がん剤治療が適応になり、抗がん剤治療を行えば、生存率は10~20パーセントほど上がります。その一方で、抗がん剤の副作用の問題があります。この効果と副作用を天秤にかけて、抗がん剤治療をすべきか否かを考える必要があります。

ご相談者は糖尿病や高血圧症などにもなっているようですから、抗がん剤の副作用はそれらがない場合よりひどく出る可能性があります。仮に3期としても、主治医はそうしたことを考慮して、抗がん剤治療を見合わせたのかもしれません。

また、そもそも手術後の補助化学療法の効果は、かなり限られているとご理解ください。補助化学療法を行ったからといって、必ず再発を防げるわけではありません。また、手術後、約1年を経て補助化学療法を行った場合、どの程度の効果があるかに関してのデータはありません。

再発した場合の程度の違いについてお尋ねですが、これは抗がん剤治療をしていても、していなくても、基本的には変わりありません。また、抗がん剤治療を行ったとしても、再発後の治療内容は大きく変わりませんが、薬剤耐性(前に使った薬が効かなくなる)の問題があるので、アバスチン(一般名ベバシズマブ)などの分子標的薬を使うことも考慮されます。

再発・転移した場合の抗がん剤治療には、延命効果が確認されています。ただし、延命を目的にした抗がん剤治療を行う場合も、糖尿病や高血圧症、腎臓などの状態を考慮し、治療によるメリットとデメリットをよく勘案する必要があります。