直腸がんの転移。どんな治療法があるか

回答者:大矢 雅敏
獨協医科大学越谷病院 第1外科主任教授
(2010年5月)

4年前に直腸がんで手術を受け、ストーマ(人工肛門)を造設し、排尿障害になりました。最近、PET検査で子宮と骨盤の間に転移があることがわかりました。(1)直腸がんにも転移はあるのでしょうか(2)今後の治療について、放射線治療→手術→放射線治療の方法があると聞く一方で、放射線治療をしたら手術はできないとも聞いています。どんな治療をしたらよいでしょうか(3)治療による後遺症は残るでしょうか(4)手術後はちゃんと歩けるようになるでしょうか。この4点が相談です。最初の手術で後遺症があっただけに、今度の治療による後遺症が気になります。

(宮城県 女性 49歳)

A 手術の後に放射線治療や化学療法をプラスしたほうがよい

直腸がんの再発転移は遠隔転移の肝転移や肺転移が多いですが、骨盤内再発という局所再発も比較的あるパターンです。

手術成績のよい専門施設でも、骨盤内再発は10パーセント程度の割合で起こります。欧米では、以前は30パーセント程度と言われていました。すなわち、ある程度は起こりうる再発です。

放射線治療は、骨盤内再発の治療法として有力です。ただし、放射線治療後に手術をして再度放射線治療をするという治療法は一般的には行われていません。放射線治療は、一定期間まとめて続けて受けないと有効性があまり期待できません。放射線治療を半分行ってから手術をして、そのあとで残りの半分を行うというやり方はほとんど行われていません。現在では放射線治療後に手術をするか、手術をしてから放射線治療をするのが一般的です。

どちらがよいかについて結論は出ていませんが、再発病巣が手術で取り切れる可能性が高いかどうかが治療法を選ぶポイントです。

手術だけで取り切れる再発病巣なら、手術を先にしたほうがよいと思います。根治的手術が難しいような再発病巣なら、放射線治療後に手術をすることもあります。ただ、放射線治療後の手術は、多少難しくなります。

おそらく、相談者の再発パターンだと、手術単独より、どの程度よくなるかについてのデータは出ていませんが、手術後に放射線治療や化学療法をプラスしたほうがよいと思います。

手術では、少なくとも子宮は切除します。術中・術後の合併症として、出血や切除したあとの骨盤内感染症があります。子宮切除そのものによる後遺症は、ほとんどありません。場合によっては、膀胱を切除することもあります。膀胱切除後は、尿路系統のストーマの造設も必要となるでしょう。仙骨などの骨盤の一部をとることもあります。この場合は、術中・術後に出血や感染症の合併症を伴うことがあります。歩行障害は、まず発生しないと思います。

相談者は若いのですから、切除できる病巣なら手術はしたほうがよいでしょう。合併症にしても、若いので乗り切れると思います。

ただ、今回の手術は、最初の手術を担当した外科医とは別の外科医に依頼したほうがよいかもしれません。手術をした外科医にとっても再発はつらい結果です。すでに気持ちで負けていますし、前回の手術のときにも根治を目指して切除していますので、より広い範囲の切除を要する再発の手術で取り残しのない切除を行うのは、同じ外科医には難しいのではないか、というのが理由です。