口腔ケアはいつから、何をやったらいい?

回答者:林 隆一
国立がん研究センター東病院 副院長・頭頸部外科科長
(2013年5月)

Ⅲ期の舌がんと診断されました。これから外科手術に入るそうです。ただ、担当医からは治療に入る前に口腔ケアをしましょうと言われています。具体的には何をするのでしょうか、その効果も教えてください? また、患者にできることはあるのでしょうか?

(東京都 女性 48歳)

A 治療前からの口腔ケアが大切

舌がんや口腔底がんなどの頭頸部がんでは、放射線治療や抗がん薬治療、また、再建術をともなうなど大きな外科手術が必要な患者さんなどには、口腔ケアが必要となります。

というのも、頭頸部がんの手術では、術後に誤嚥することによる誤嚥性肺炎や、細菌が頸部に広がる創感染などの合併症の危険性が高いためです。

また、抗がん薬治療や放射線治療を行うと、副作用のため、のどや舌の側面、頬の内側などの口腔内の粘膜に炎症をきたします。

これらの粘膜炎は、抗がん薬治療を受ける患者さんの40%の割合で出現します。抗がん薬はがん細胞を攻撃するだけでなく、正常な細胞も影響を受けてしまうためです。

放射線治療を受ける患者さんでも、ほぼ100%の割合で出現します。唾液腺に放射線があたることで、唾が出にくくなり、口腔乾燥や味覚障害まで引き起こすこともあります。

口腔ケアは、口腔粘膜炎などの重症化を予防ことで、合併症が起こりにくくする働きがあります。そのため、頭頸部がんの場合、治療前から口腔ケアを行う必要があるのです。

口腔ケアとは、口の中の清潔・保湿を維持することです。うがいや保湿剤による保湿のほか、スポンジブラシによる清掃、歯ブラシによるブラッシングなどがあり、「専門的な口腔ケア」と、患者さん自身が行う「セルフケア」の2つがあります。

専門的な口腔ケアとは、歯科医師や歯科衛生士によって、歯や粘膜、義歯などの付着物を器械的・化学的に除去することをいいます。具体的には、歯石や歯垢の除去、歯周炎や虫歯の治療、歯周ポケット検査、ブラッシング指導、器械的歯面清浄などです。

セルフケアには歯磨きのほか、うがいなどがあります。セルフケアが行えない場合、看護師による口腔ケアや、歯科医師や歯科衛生士による専門的機器による清浄などが行われます。

2012年4月の診療報酬改定で、周術期の口腔ケアが「口腔機能管理料」として保険適応されるようになりました。また、「がん対策推進基本法」の重点項目として、医科歯科連携による口腔ケアの推進が盛り込まれました。

治療をしている施設に歯科がある場合は、そこで口腔ケアの指導が受けられます。まだ少ないものの、施設によっては近隣の歯科医院と連携がとられているところもあるため、近所の歯科医院を紹介してもらうこともよいでしょう。

口腔ケアは、怠ると食欲不振などによってQOL(生活の質)の低下を招いたり、治療の継続が困難になりかねることもあります。治療前はもとより、治療中・治療後も口の中を清潔に保つため、継続して行うとよいでしょう。

歯周ポケット=歯と歯茎の境目の溝