マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第49回 痛みなく死にたい<膝をついて体側を伸ばすポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
(2022年6月)

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

「今は緩和ケアがあるからね、痛みに対する恐怖というのはかなりやわらぎましたよね」

「私も痛いのだけは嫌だなー。良くなるためだって、つらいのは嫌なのに、死んでいくのに痛くて苦しくてのたうち回るなんて……。残された家族にとってもずっと心の傷になって残っちゃう」

筆者が主宰するヨガスタジオで定期的に開催されている「がんサバイバーのためのヨガ&トーク」の集まり。参加者たちは率直に、またユーモアをもって情報を交換します。

この会「リボンヨガ」と私たちは呼んでいますが、会を立ち上げからけん引してきたヨガインストラクター・リエさん。自身も乳がんサバイバーで、肺への転移が判明した後も、それはていねいに誠実にこの会を育ててきました。

「ステージ4の人のためのクラスも立ち上げたい。ステージ4だって、全然終わりじゃないし、こんなふうに身体を動かしたら気持ちいいし、楽しめるんだってことを伝えたい」と言っていました。

がんサバイバーのヨガを立ち上げたインストラクターの余命宣言

その彼女が今年になって全身状態が悪化、3月になると余命1カ月の宣告を受けました。

適切な緩和ケアのおかげで、痛みはほとんどないというリエさんの近況を報告したすぐ後の集まりでのことでした。

ふだんは終末期についてリアルな情報交換というのはあまりないのですが、このときは活発に行われました。

このサイトもそうですが、体験談というのはやはり、こうして良くなった話がメインとなります。もちろんそれも重要ですが、どうやって終末期を過ごせるか、どういう選択肢があるのかは、本当のところ大きな関心事です。

もっともっと情報発信されていいテーマなのですが、本人は情報発信どころではない段階になります。家族や身近な人も、発信する余裕があっても、当事者に代わってどこまで踏み込んでいいのか迷うところです。

いずれ私たちは誰でも終末期を迎えます。

ですから、切実なこの話題に最新の情報を分け合うという貴重な機会となりました。

リエさんは同じ病気のヨガ仲間が、病気に恐怖心を持つのではないかとても心配していました。

彼女の場合、ラッキーなことに家族に看取りの看護師と医師がいて、それまで生活していた場で緩和ケアを続けることが可能でした。

そして5月3日他界。その直前に「今、わたしは、とっても幸せです」にはじまる動画をLINEに投稿。動画を作成してくれた家族の方に感謝です。

独りでも自宅で看取られるのも可能な時代に

たまたま同時期に、親しくさせていただいている方がご主人を亡くされました。

その方もご自宅で家族とともに終末期を過ごされました。

有効な抗がん薬がもうなくなったということで退院し、自宅で訪問医療、看護、介護と体制を整えられたそうです。そのため家族も、基本的に自分の仕事を続けることが可能になりました。もともとは独居用の体制だそうで、独りでも自分の生活空間で緩和ケアを受けながら、親しい人に看取られるという最期も可能な時代なってきたことを知りました。

自宅のリビングにベッドを置き、普段通りの家族たちの生活のなかで、その一員として最後の数週間を過ごせたのでした。

何だか勇気が湧いてきます。

情報というのが非常に大切です。最初の手術の段階から、緩和ケアの病棟を持っている病院か、緩和ケア専門医がチームに加わっているのか、あるいはそうした提携があるのか、調べたほうがいいというがんサバイバーからのアドバイスもあります。

なかなかそこまで気が回らないのが現実でしょうが、どの段階でも主治医や病院のケースワーカーに気楽に相談してみてもいいのかしれません。

「今やれることをやる」、そして「元気に楽しく自分のために生きる」をモットーにしたい。

なお、がんサバイバーのため「リボンヨガ」は現在も継続中です。

さて今月は「膝をついて体側を伸ばすポーズ」です。

体側をていねいに伸ばすという動作は日常生活ではあまり行いません。このポーズでゆったりと胸を開き、体側をじわじわっと伸ばします。

<膝をついて体側を伸ばすポーズ>

①マットに正座して姿勢と呼吸を整えます 
②腰を上げて、膝立ちになります。両膝は腰幅に。また、両足の踵(かかと)を上げるほうが姿勢が安定する人もいます。試してより安定するやり方で
③左足を左に大きく伸ばします。骨盤は水平に保ち、へそは正面。もし左腿の付け根がきついと感じたら(左腰が少し高くなる)、少し左膝を緩める(少し曲げる)とよい
④息を吐いて姿勢を整える。吸いながら両腕を水平に開く。肩は腕と一緒に上がりがちなので、むしろ肩を下げる心持ちでいると、胸が開きリーチが広がる。両手の指先で遠くの空気を押していくようにイメージする
⑤ゆっくり息を吐きながら、上体を左に倒していく
⑥息をついで右手のひらを返し、指先をさらに上へ、さらには右耳に近づけていく。左手は重力に従って下方に下げる。このまま4~8呼吸保つ
⑦ゆっくり順序を逆にたどり②に戻し、今度は反対側を同様に

動画は反対側のインストラクションも続けています。

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

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