胆道がん、これだけは知っておきたい基礎知識 手術だけでなく化学療法の進歩にも期待
部位により4つに分かれがんの性質も異なる
胆道とは胆汁の流れる道筋の総称で、胆道がんはできた部位によって、大きく次の4つに分類されている。
(1)肝内胆管がん……肝臓の中にある胆管にできたがん。
(2)肝外胆管がん……肝臓の外にある胆管にできたがん。肝外胆管の一部は膵臓の中を通過する。
(3)胆のうがん……胆のうにできたがん。
(4)乳頭部がん……十二指腸につながる乳頭部にできたがん。
「肝臓の中から始まって、最後は膵臓の中にまで入り込んで、十二指腸につながる。このうちのどこにできても胆道がんですが、どこにできるかで、手術の術式は大きく違ってきます。がんの性質も、できる部位によって多少違います。胆管がんは局所で進行しやすく、遠隔転移は比較的少ないのが特徴。胆のうがんは、胆管がんに比べると早い段階から遠隔転移しやすい傾向があります」
胆道がんは、日本でも欧米でも増えている。とくに近年、ヨーロッパを中心に、肝内胆管がんが増加していることが明らかになった。
「ヨーロッパで増加した原因を探る疫学的な研究が行われ、その結果として、喫煙、肥満、糖尿病、肝炎ウイルスなどがリスクファクターとしてあげられています」
あくまで疫学データだが、日本人に胆道がんが増えているのも納得できるような結果となっている。
根治的治療は切除手術だけ
胆道がんの治療はなかなか困難で、根治の可能性があるのは外科的な切除手術だけである。そして、その手術はきわめて難易度が高い。がんのできた部位によって手術法はさまざまだが、いずれにしても難易度の高い手術になる。
「胆道がんや膵臓がんの手術は、 消化器外科のトレーニングをした後に、胆道や膵臓を対象にした専門のトレーニングをした外科医が行う手術です。そうでなければ、きっちりした手術はできないと考えていいでしょう。現在の段階では、その施設がどのくらいの手術数をこなしているかが、1つの参考にはなると思います」
現在、日本肝胆膵外科学会では、『高度技能認定医』制度を作ろうと検討に入っていて、早ければ1~2年のうちに実現するという。この制度ができれば、肝胆膵がんの���易度の高い手術を受ける際の参考になるだろう。
胆道がんの治療で根治が望めるのは切除手術だけだが、発見された時点で手術不能と診断される例も多い。そういった患者さんには、抗がん剤治療が行われるが、従来、抗がん剤治療はほとんど期待できなかった。
最近の話題としては、抗がん剤のジェムザール(一般名 塩酸ゲムシタビン)が、2006年に保険薬として認可されたことだろう。第2相試験の結果、腫瘍縮小効果が示されたとして認可されている。手術できない胆道がんがかなりの割合を占める以上、化学療法の進歩にも期待したいところだ。
『胆道癌診療ガイドライン』

肝胆膵がんのガイドラインとしては最後となる『胆道癌診療ガイドライン』が、2007年10月31日に刊行された。編集に携わった宮崎さんは、ガイドラインの必要性について、次のように語っている。
「胆道がんの根治的治療は切除手術ですが、これまでは、施設によって、手術の適応にかなりばらつきがありました。だからこそ、ガイドラインで、ここまでは手術で切除する、というラインを明確にすることに意味があったと思います。本来なら手術できる症例なのに、早々とギブアップしてしまい、放射線療法や化学療法に回すということが、けっこう行われていましたからね」
この診療ガイドラインをまとめるために、世界中の研究データが集められた。英文論文が1266編、和文論文が2233編。医療者向けのガイドラインだが、「患者さんに治療法を説明するときにも使っています。専門家でなければわからないということはないと思いますよ」と宮崎さんは話している。