膀胱がんの基礎・最新治療 高齢化に伴い罹患率が上昇 5年生存率は病期別に10~90%
「低侵襲・根治的・膀胱温存療法」患者さんのQOLに寄与
筋層浸潤膀胱がんの標準治療は膀胱全摘除+尿路変向ですが、この手術は患者さんへの負担が大きく(欧米の一流施設での周術期死亡率2~3%)、また膀胱機能がなくなることによる、術後の患者さんのQOL(生活の質)の低下が問題となります。
これらを解決すべく開発されたのが膀胱温存療法です。通常は、「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)+化学療法+放射線療法」で行われ、患者さんのQOLが維持されるうえに、膀胱全摘除と同じ程度の生命予後が報告されています。現在は、膀胱全摘除の代替治療に位置付けられています。
進化する膀胱温存療法
駒込病院では放射線診療科との密接な連携の下、新しい膀胱温存療法である「低侵襲・根治的・膀胱温存療法」を行っています。対象となる患者さんは、転移がなく、がんの範囲が膀胱全体の4分の1以下の筋層浸潤がんの患者さんです。TUR-BTでがんを減量した後、低用量化学放射線療法を行います。放射線量は従来の3分の2(40グレイ)で4週間(週5日)行います。抗がん薬はシスプラチンを1週目と4週目に5日間投与します。そして、仕上げの治療として、体に優しい低侵襲手術で膀胱部分切除と骨盤リンパ節郭清を行います。
最新3D内視鏡による仕上げの手術
この仕上げの手術により、従来の膀胱温存療法より高い根治性が得られます。仕上げの手術は、「ガスレス・シングルポート・ロボサージャン手術」で行います。この手術は、CO2ガスを使用せず(ガスレス)、下腹部の3~4cmほどの孔を1つ開けるだけ(シングルポート)で、最新型の3D内視鏡と多機能ヘッドマウントディスプレイ(ロボサージャンシステム)を用いて行います。日本発の新規手術であり、高い安全性と低侵襲性が特長です。保険適用の治療です。

「低侵襲・根治的・膀胱温存療法」は国際的にも高く評価されています。1人でも多くの筋層浸潤膀胱がんの患者さんに、根治と良好なQOLを提供することが私たちの願いです。

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