化学療法でがんが縮少し、手術可能なケースも 転移性膀胱がんはより副作用の少ない治療へ
抗がん剤治療は効果のある限り継続する
GC療法の治療スケジュールは1コース28日サイクルで、千葉県がんセンターでは最初の約4日間は入院して治療を行います。ジェムザールは初日に投与すると、その後は、1週間おきに使われます。
一方、シスプラチンは2日目に1回投与されます。シスプラチンは腎臓に対する毒性が強く、その予防のために、3~4日目は大量の水分を点滴で補給します。また2回目、3回目のジェムザールの投与は外来通院で行えます。
抗がん剤治療をどこまで続けたら良いのか、との議論もありますが、現状では転移性膀胱がんは治療法が限られています。専門医の間でも意見が分かれているとのことですが、千葉県がんセンターではGC療法やMVAC療法で効果が得られている間は、治療を継続しているそうです。
「現在10コース目を行っている方など、GC療法で長く病状を抑えられている方も多くいらっしゃいます。また、シスプラチンは使用が長期間にわたると腎毒性があらわれますから、副作用が起きたときはジェムザール単剤で治療を続けるというケースもあります」(深沢さん)
副作用が軽減されたことで患者さんのQOLが改善
GC療法はMVAC療法との比較試験で証明されたとおり、副作用が大幅に軽減されており、GC療法後の患者さんのQOL(生活の質)はとても改善したといわれています。
具体的には、MVAC療法で多くみられた食欲不振、悪心、嘔吐などの消化器症状はGC療法では明らかに減少しています。ただし、GC療法では血小板減少と便秘がMVAC療法と比較してやや多い傾向にあることが報告されています。
血小板減少への対策としては、採血で血小板減少が確認された場合、血小板減少の副作用の発現率が高いジェムザールを、2回目または3回目のどちらかの投与を行わずに治療を継続します。
また、千葉県がんセンターの経験ではMVAC療法に比べて便秘が多くみられるそうです。便秘に関しては、便が硬くなってしまった場合には緩下剤(便秘薬)などを使って便通を整えます。消化器症状に関しても、近年、制吐剤も進歩してきているため改善傾向にあるそうです。
「GC療法は最初の4~5日間は患者さんに入院をしてもらって治療を行う施設が多いのですが、この期間も外来通院で治療にあたるという試みをしている施設や医師もいるほどです。これ��MVAC療法では考えられなかったことで、副作用は明らかに減少したと感じています」
GC療法でがんが縮小し、手術に持ち込めたケースも


転移性膀胱がんは通常手術の適応はありませんが、千葉県がんセンターではGC療法でがんが縮小し、膀胱全摘出手術にまで持ち込めたケースもあるそうです(写真5)。
しかし、これは骨盤内転移などのように転移部位が限定されている症例に限られます。
転移部位が肺などのような遠隔転移の場合や、年齢が80歳を超えていて生活レベルも低下している患者さんなどには通常手術の適応は考慮されません。
また、緩和医療の選択や移行時期などは、情報提供の上、患者さんとご家族の意思を最大限に尊重して判断が行われています。
「千葉県がんセンターではGC療法の前後、治療法を提示する際に並行して緩和医療に関する情報提供も行っています。骨転移による痛みの症状が出ている患者さんには、痛みをとるための放射線療法を含めた治療法を考えていきます」(深沢さん)
他にも転移性膀胱がんでは、病気が進行してくるとがんの痛み以外に膀胱からの出血など、さまざまな症状が出てくることがあります。そのため、転移性膀胱がんは積極的な治療だけでなく、緩和的な治療もしっかり行ってくれるバックボーンがある病院で、治療を受けることが非常に大切といえるでしょう。
分子標的薬治療の研究開発に期待
泌尿器がん全域で見てみると、腎がんに関しては分子標的薬の研究開発がものすごい勢いで進んでおり、優れた治療成績も報告されてきています。
また、ホルモン療法が効かなくなった前立腺がんにも分子標的薬の臨床試験が開始されるなど、泌尿器がん領域も分子標的薬でがんを治療するという時代が到来しつつあります。
「あくまでも私見ですが、今後は膀胱がんも分子標的薬で治療を行う時代が来ると思っています。抗がん剤治療以外では、国内ではペプチド(*)ワクチン治療の開発も進んできているようです」(深沢さん)
膀胱がんの治療にも今後、新たな薬剤がでてくることに期待したい。
*ペプチド=がんを特定する際の目印
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