分子標的薬や、多様な治療法の組み合わせの登場で着々と改訂が進行中 膀胱がんの「診療ガイドライン」の注目ポイント

監修:三木恒治 京都府立医科大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授
取材:「がんサポート」編集部 構成/柄川昭彦
発行:2011年1月
更新:2014年1月

ステージ2、3なら膀胱摘除とリンパ節郭清

ステージ2、3の標準治療は、根治的膀胱摘除術と骨盤リンパ節郭清術である。エビデンスはしっかりしていて、

〈現時点ではこれ以上の治療効果を保証する治療法はない。推奨グレードA〉

とまで書かれている。

新しい話題としては、術前補助化学療法の有効性が示唆されている。

〈生存率向上の効果が示されているのはシスプラチン(一般名)を含む多剤併用術前化学療法である。推奨グレードA〉

ただし、この治療は日常診療では標準的には行われていない。

手術で膀胱を取ると、尿路変向が必要になる。いろいろな方法があるが、ほぼ正常な排尿状態が得られるという点で、自然排尿型尿路再建が推奨されている。

「できることなら自然に排尿するのがいいというのは当然でしょう。どのような尿路変向を行っても、がんの治療成績に影響しないことは明らかになっています」

自然排尿型膀胱再建を行うためには、尿道を残せることが必要になるという。

効果が同等で副作用が軽いGC療法が選ばれている

膀胱がんの全身化学療法として、かつてはMVAC療法が広く行われていた。メソトレキセート(一般名メトトレキサート)、エクザール(一般名ビンブラスチン)、アドリアシン(一般名ドキソルビシン)、シスプラチンの併用療法である。効果は高いが、強い副作用が出ることで知られていた。白血球の減少、下痢などの消化器症状、口内炎、脱毛などが主な副作用だ。

これに対し、副作用が軽い治療法として、GC療法が行われるようになってきた。ジェムザール(一般名ゲムシタビン)とシスプラチンの併用療法である。08年にジェムザールが保険適応となり、日本でもGC療法が行えるようになった。

こうした状況で、MVAC療法とGC療法はどちらが有用かという問いに、ガイドラインはこう答えている。

〈(略)両者とも治療効果は同等であることが報告された。有害事象は、好中球減少症、口内炎、脱毛などであり、GC療法の方がより軽微である。推奨グレードA〉

MVAC療法とGC療法を比較した臨床試験では、生存期間に有意な差はない(図4)。ところが、有害事象の差は明らかだったのだ。

[図4 MVAC療法とGC療法の全生存率の比較]
図4 MVAC療法とGC療法の全生存率の比較

Von der Maase H, J Clin Oncol 2005 Jul 20; 23 (21): 4602-8

「効果が同じなら、副作用が軽いほうがいいというのは当然です。NCCNのガイドラインでも、EAU(欧州泌尿器科学会)のガイドラインでも、GC療法が第1選択となっています」

ガイドライン刊行後の新しい治療法

第1版のガイドラインが刊行されたのは09年だが、すでにいくつかの治療法が新たに登場してきている。それを列挙すると、次のようになる。

筋層非浸潤性膀胱がんにおけるBCG維持注入療法の確立

「海外でも国内でも臨床試験の結果が報告され、この治療の有用性が明らかになっています」

同ステージにおける膀胱温存

「TUR-Bt、放射線療法、化学療法を組み合わせる膀胱温存治療のデータが、いくつか報告されています」

全身化学療法におけるアンフィット・ペイシェントの概念確立と、それに対する化学療法の標準化

「アンフィット・ペイシェントとは、合併症をたくさん持っていて、体が弱っている人のことです。副作用の軽いカルボプラチン(一般名)を用いた併用療法や、白金製剤を用いない併用療法が有効です」

改訂された第2版のガイドラインには、これらの内容が入ってくる可能性がある。改訂に向けての作業は始まっているそうだが、第2版の刊行時期はまだ決まっていないようだ。

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