手遅れにならないためには、受診をためらわないことが大切 これだけは知っておきたい泌尿器がんの基礎知識 膀胱がん編
筋層非浸潤性なら内視鏡で取り除く

矢印で示した盛り上がった部分が膀胱がん(非筋層浸潤型)
筋層非浸潤性膀胱がんに対しては、内視鏡の先端から電気メスを出して切除する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)が行われる。切除した組織を調べ、1~3の3段階で悪性度の評価も行う。3が高悪性度で最も再発しやすい。また、膀胱壁のどこまで浸潤していたかも調べるという。
うまく切除できても再発することが多いため、それを防ぐ目的で、抗がん剤や結核予防用ワクチンのBCGの膀胱内注入療法が行われる。抗がん剤はアドリアシン(一般名アドリアマイシン)かマイトマイシン(一般名マイトマイシンC)のどちらかが使われる。
「膀胱がんには多中心性という特徴があります。尿中の発がん物質が関係するため、膀胱内のどこも同じようにがんができやすい状態になっているのです。また、がんができると、それが膀胱内に転移する腔内播種という現象が起きやすい。こうした点からも、注入療法は再発予防に効果的だと言えます」
浸潤性膀胱がんの治療では、遠くの臓器への転移が起きているかどうかが、重要なポイントになる。こうした遠隔転移がなければ、膀胱全摘手術が標準治療となっている。膀胱がなくなるので、尿路変向が必要になる。代表的な方法は3つある。
●自排尿型代用膀胱……小腸で袋を作って代用膀胱とし、尿道につなぐ。代用膀胱に尿をため、腹圧で尿道から排尿する。
●回腸導管……回腸(小腸の一部)を使って尿を流す管にし、皮膚に作ったストーマ(排泄口)につなぐ。再発の危険から、尿道を残せない場合に行われることが多い。
●尿管皮膚瘻……尿管をそのまま皮膚に開けた孔につなぐ。腸を使わないので手術時間が短い。
「自排尿型の尿路変向は、患者さんのQOL(生活の質)が高く保てるのがメ���ット。回腸導管はストーマが必要ですが、構造が比較的単純なのでトラブルが少ないのが特徴です」

尿路変向には、自排尿型代用膀胱、回腸導管、尿管皮膚瘻の3通りの方法がある
浸潤性膀胱がんで遠隔転移が見つかった場合には、全身治療が必要なので、抗がん剤による治療が行われる。従来は、MVAC療法が広く行われてきた。メソトレキセート(一般名メトトレキサート)、エクザール(一般名ビンブラスチン)、アドリアシン、シスプラチン(一般名)という4剤の併用治療である。ところが、最近はGC療法が中心で、これが標準治療とされている。ジェムザール(一般名ゲムシタビン)とシスプラチンを併用する治療法である。
「GC療法は1年ほど前から使えるようになったのですが、MVAC療法と比較すると、抗腫瘍効果は遜色がなく、副作用は圧倒的に軽くなっています」
GC療法の登場は、患者さんの負担軽減という面では大いに役立っているようだ。
泌尿器がんに負けないために
最後に、泌尿器がんで命を落とさないために、何をすべきなのかをまとめてもらった。
「まず大切なのは恥ずかしいからと受診をためらわないことです。たとえば、血尿など気になる症状があったとき、泌尿器科は行きにくいからとためらうと、それで手遅れになってしまうことがあります」
もう1つは、PSA検診を受けることだ。検診として有効ではないという意見もあるが、手遅れにならなくてすむツールがあるのだから、自分が前立腺がんで命を落とさないためには使うべきだという。
「新しい薬がどんどん登場していますし、泌尿器科全体でも、この5年ほどで相当の数の薬が出てきました。これで終わりではなく、まだ新しい薬が予定されています」
この分野は治療が急速に進歩している。現在がんを抱えている人も、希望を持って治療に取り組んでほしい。
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