予後がよくないがんは早期発見が要。定期的な尿検査や超音波検査を これだけは知っておきたい膀胱がんの診断と治療
表在性がんは膀胱鏡で切除することが可能
がんが筋層に達していない表在性がんでは、内視鏡を使って腫瘍部分のみを取り除く「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)」が行われる。診断用の膀胱鏡よりやや太い内視鏡が使われるが、患者さんにとって身体的な負担はそれほど大きくないという。またこの手術では、膀胱の腫瘍部分だけを取り除くため、膀胱機能は温存される。
「ただし、この治療を行ったとしても、5~6割ほどの患者さんには再発が起こります」と窪田さん。
これは、必ずしも取り残しがあるための再発ではなく、新たながんができてしまうためだという。そこで再発を防ぐための治療として行われるのが、BCGの膀胱内注入療法だ。結核のワクチンであるBCGを膀胱内に注入し、膀胱の表面にあるがんの小さな芽をたたいておく治療である。
「かつてはドキソルビシン系の抗がん剤が使われていたのですが、BCGのほうが成績がいいので、こちらが使われるようになってきました。BCGがなぜ効くのかはっきりしたことはわかっていません」
一方、浸潤性がんに対しては膀胱全摘術を行い、尿路変向術を行うのが標準的だ。
「膀胱を摘出すると、排尿するために尿路を変更、再建する手術が必要となります。つまり、膀胱全摘術と尿路変向術を同時に行うことになります。泌尿器科で行われる手術の中で、最も時間が長くかかる手術です」
手術時間は短くても6時間。長ければ10時間以上が必要となる。
尿路変向の方法にはいくつかの方法があるが、現在よく行われているのは次の3つの方法だという。
・回腸導管……小腸の一部を導管として用い、ストーマ(排泄口)から体外のパウチ(袋)に排尿する。
・自排尿型代用膀胱……腸管で膀胱を作成・再建し、尿管と尿道につなぐ。括約筋は残すので失禁せず、自分で排尿できる。
・自己導尿型代用膀胱……腸管で尿をためる代用膀胱を再建し、尿管とつなぐ。尿がたまったら自分で体外に尿を排泄する。



それぞれに長所と短所があるので、自分にとって最もふさわしい方法を選ぶと良い。
「スタンダード(標準)と言えるのは回腸導管です。古くから行われているので手術法が安定していますし、30年、40年経過しても、問題ないことが証明されています。ストーマをつけることに抵抗を感じる人は多いのですが、パウチも薄くて目立たなくなっていますし、ストーマケアを専門とする看護師も誕生しています。サポート体制が整ってきたので、以前に比べれば、ストーマを持つ人たちが生活しやすくなっていると思います」
一方、上皮内がんに対しては、かつては膀胱全摘術が行われていたが、現在ではBCGの膀胱内注入療法が第1選択となっている。この場合、BCGの膀胱内注入のみでがんが消失する人も多いという。ただ、BCG膀胱内注入を行ってもだめな場合には、膀胱全摘術が行われることになる。
再発転移がんは米国ではGC療法が第1選択に
すでに転移を起こしているような進行がんや、膀胱全摘手術後に再発したような場合には、全身の化学療法が行われる。これまで標準治療として行われてきたのは、M-VAC療法(メトトレキサート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチン=一般名)という4つの抗がん剤による併用療法だった。
日本ではM-VAC療法が第1選択とされているが、アメリカでは新しい化学療法が行われるようになっている。ジェムザール(一般名ゲムシタビン)とシスプラチンを併用するGC療法だ。
治療評価項目 | GC(203症例) | MVAC(202症例) |
---|---|---|
生存期間(中央値) | 13.8カ月 | 14.8カ月 |
無増悪生存期間(中央値) | 7.4カ月 | 7.4カ月 |
奏効率 | 49.40% | 45.70% |
「治療成績では、M-VAC療法もGC療法もほとんど変わりません。何が違うかというと、GC療法のほうが副作用が少ないのです。それで、アメリカではGC療法が第1選択になっています」
これまでは、M-VAC療法しかなかった膀胱がんの治療だが、副作用の少ないGC療法の登場で患者さんの負担軽減につながることが期待されている。
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