治療の主体は抗がん剤を用いた化学療法と造血幹細胞移植 新薬など進歩著しい急性骨髄性白血病の最新治療

監修:松村到 近畿大学医学部血液内科教授
取材・文:増山育子
発行:2010年4月
更新:2013年4月

移植はどんな人に必要か

60歳以下の急性骨髄性白血病患者を対象とした「寛解導入療法」後に行われる「地固め療法」には、数種類の抗がん剤を併用した化学療法とキロサイド大量療法とがある。

急性骨髄性白血病は染色体や遺伝子の異常などから「予後良好群」「予後中間群」「予後不良群」に分けられるが、この予後群別の臨床試験結果からみると、どちらを選んでも統計学的な有意差はないという。

「ただし、予後良好群のうち、CBF白血病と呼ばれる染色体異常を有するタイプはキロサイドに対する感受性が高く、キロサイド大量療法が標準的治療といえます」

「地固め療法」のあとに従来行われてきた「維持・強化療法」はその必要性を確かめる臨床試験がJALSGで行われ、現時点では「寛解導入療法」「地固め療法」でしっかりとした化学療法を行っていれば「維持・強化療法」は必要ないという結論になっている。

「寛解後療法」には、「地固め療法」のほかに、「造血幹細胞移植」という道がある。「造血幹細胞移植」には患者自身の造血幹細胞を使う「自家造血幹細胞移植」と、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植、といったHLA(白血球の型)が一致した同胞やドナー(臓器提供者)から造血幹細胞の提供を受ける「同種造血幹細胞移植」がある。いずれも重い合併症や副作用が現れる非常に厳しい治療で、誰もが受けられるわけではない。

どんな人に移植が必要なのかを明らかにしようと国内外でさまざまな臨床試験が行われているが、急性骨髄性白血病全症例でみると、移植が従来の化学療法にまさるという明確な結果が得られた試験はない。

「予後良好群、中間群、不良群でそれぞれ移植が有利かどうかを解析すると、予後不良群と中間群ではドナーがいたら移植を行うほうがいいし、予後良好群は行わないほうがいいということになっています。HLA一致の血縁ドナーがいればいいですが、日本の場合はドナーが血縁でも非血縁でも治療成績はあまり変わらないので骨髄バンクからのドナーでも構いません。ドナーがいれば移植、いなければ従来の化学療法になります」

[日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)
急性骨髄性白血病97試験における強化維���療法
実施群と非実施群の無病生存率(A)と全生存率(B)]

図:JALSG臨床試験グラフ

出典:Miyawaki S, et al., Cancer 104:2726-2734, 2005


[寛解後療法としてのキロサイド大量療法
CALGB(米国立がん研究所共同臨床試験・白血病グループ)研究]

図:寛解後療法としてのキロサイド大量療法

出典:New Eng J Med 331:896-903, 1994

[造血幹細胞移植の適応]

病期 リスク 同種移植 自家移植
HLA
(白血球の型)
同胞ドナー
非血縁
第1寛解期 t(15;17)転座 CRP NR R/CRP
低リスク CRP CRP R/CRP
標準リスク D R R
高リスク D R CRP
第2寛解期 D R CRP
第3寛解期以降 R R CRP
第1再発早期 R R/CRP NR
再発進行期/寛解導入不応期 R/CRP R/CRP NR
D:積極的に移植を勧める場合
R:移植を考慮するのが一般的な場合
CRP:標準的治療法とは言えず、臨床試験として実施すべき場合
NR:一般的に認められない場合
出典:日本造血幹細胞移植学会、造血幹細胞移植の適応ガイドラインより一部改変


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