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急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の新しい治療薬の効果 遺伝子レベルの解明で進歩著しい急性白血病の治療

監修:内丸薫 東京大学医科学研究所付属病院内科・先端医療研究センター分子療法分野准教授
取材・文:町口充
発行:2008年9月
更新:2013年4月

化学療法で完全寛解をめざす

[化学療法]
図:化学療法

急性白血病と診断されたら、速やかに治療が開始される。基本は化学療法で、治療法は大きく分けて「寛解導入療法」と「地固め療法」とがある。

白血病は、発症時にだいたい体内に10の12乗個ほどの白血病細胞が存在するので、まず「完全寛解」に持ち込むために行われるのが寛解導入療法だ。

完全寛解とは、骨髄中の白血病細胞が5パーセント以下となり体内の白血病細胞が10の10乗個以下に減少し、正常な造血能力が回復、貧血や白血球減少、血小板減少などの症状が解消された状態をいう。

ただし、寛解導入療法によって白血病細胞が10の10乗以下に減って、一見したところ正常に見えても、実際にはまだ大量の白血病細胞が残っていて、決して根絶されたわけではない。そこで、根絶のために行われる強力な化学療法が地固め療法だ。

「かつて日本では、急性骨髄性白血病に対して地固め療法を何回かやったあと、さらに維持療法といわれる比較的軽い化学療法を2年近く行うのが主流でした。しかし、欧米では急性骨髄性白血病に関しては、寛解導入療法のあとに強力な地固め療法をやっておしまい、というのがもともと主流です。現在は日本でも、地固め療法のあとに維持療法を加えることのメリットがはっきり証明できない、生存率に差がないということがJALSG(日本成人白血病治療共同研究グループ)のデータでもはっきりしたため、急性骨髄性白血病の場合は寛解導入療法+地固め療法のあとは維持療法はやらないというのが一般化しつつあります」(内丸さん)

急性骨髄性白血病の場合、寛解導入療法で主に行われるのは、イダマイシン(一般名イダルビシン)またはダウノマイシン(一般名ダウノルビシン)とキロサイド(一般名シタラビン)の薬による2剤併用療法。完全寛解に入り、地固め療法でよく行われるのはキロサイドの���量療法だ。

一方、FAB分類ではM3に分類される急性前骨髄球性白血病だけは治療法が異なる。

この病気に対してはレチノイン酸というビタミンA誘導体が有効で、約80パーセントの長期生存が得られるという。さらに新しい治療法も登場している。三酸化砒素という砒素化合物だ。レチノイン酸の治療のあとに再発したり、レチノイン酸への治療抵抗性がある場合に用いる方法がスタンダードとして確立している。

急性リンパ性白血病の場合も、寛解導入療法のあとに地固め療法を行うまでは同じだ。しかし、急性リンパ性白血病では維持療法が重要な役割を果たす。地固め療法のあとに、維持療法を比較的長期にやることによって、明らかに治療成績がよくなるとのデータが出ているという。

寛解導入療法で軸になるのは、ダウノマイシンまたはアドリアシン(一般名ドキソルビシン)とエンドキサン(一般名シクロホスファミド)、あるいはロイナーゼ(一般名L-アスパラキナーゼ)、オンコビン(一般名ビンクリスチン)。地固め療法ではメソトレキセート(一般名メトトレキサート)の大量療法、キロサイドの大量療法などが行われるが、両方を組み合わせた治療法を行うこともある。

その後、メソトレキセートなどを中心に維持療法を1~2年行う。問題は、急性骨髄性白血病にしても急性リンパ性白血病にしても、ひと通り治療を終えて寛解に至ったといっても、本当に白血病が根絶されたかどうか、確認するのがなかなか難しいことだ。

そこで威力を発揮するのがFISH法やPCR法による検査で、とくに有効なのがPCR法という。この検査法を用いると、白血病細胞が10の5乗ないし6乗に1個、つまり10万個に1個とか数10万個に1個まじっている、ということまでチェックが可能である。PCR法で陰性であれば、白血病細胞が根絶された可能性が期待でき、細胞があったとしてもごくわずかでしかないという。

[正常造血の分化]
図:正常造血の分化

(データ:IMSUT)


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