進行別 がん標準治療 劇的な生存率の向上を生んだ抗がん剤と手術併用の進歩

取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2004年11月
更新:2013年4月

骨肉腫は切開生検、軟部肉腫は針生検でも可

悪性骨腫瘍を初期のうちに見つけるのはなかなか難しいかもしれません。痛みとはれが2大症状ですが、痛みは筋肉痛や関節炎と間違いやすく、成長期の子供では成長痛と思って見過ごし、はれも病気が進行してこなければなかなか判別しづらいものです。病気が進行して、夜じっとしていても痛いとか、痛い部分がはれていればこれを疑う必要があります。

一方、軟部肉腫は、痛みはほとんど起こりません。皮膚の下や筋肉の中にしこりやこぶができ、大きくなっても痛みを起こすことはまれですから、注意しましょう。

悪性骨腫瘍の検査は、単純X線検査が基本です。腫瘍の有無、大きさとともに、良性か悪性かも大体わかります。これにCT検査で病巣の広がりなどを調べ、さらには胸部X線検査と骨シンチグラフィで転移の有無、様子を調べます。

軟部肉腫は、X線検査でははっきりとは写りません。MRI検査が有効です。CT検査も補助的に使用されます。

こうしてがんの疑いが出れば、できるだけ早く、がんを確定するために生検を行います。生検には針生検と切開生検があります。針生検は腫瘍に針を刺し、微量のサンプルを採取して顕微鏡で調べる検査。切開生検は患部を切開して1センチ四方ほどの組織を切り取って同様に調べる検査です。

悪性骨腫瘍の場合、後述するように1年間にわたって抗がん剤治療を行っていくので、確実に診断するために切開生検が必要です。これに対して手術が中心となる軟部肉腫はそこまでしなくてもよく、外来ででき、患者に負担の少ない針生検が多く行われます。30パーセントぐらいが針生検です。

悪性骨腫瘍の標準治療

[悪性骨腫瘍の標準的治療]
悪性骨腫瘍の標準的治療
(図作成:川井章・国立がん研究センター中央病院整形外科医師)

抗がん剤と画像診断の発達が成果をもたらす

この悪性骨腫瘍の治療は、がんの種類と進行度(病期)の両面から考えていかなけれ���ならない点が難しいところです。たくさんの種類の中でも、発生頻度が多いのは骨肉腫、ユーイング肉腫、MFH(悪性線維性組織球種)、軟骨肉腫、線維肉腫、脊索腫などです。なかでも代表的なのは骨肉腫とユーイング肉腫です。

この二つのがんは、すでに述べたように、若い成長期の子供に多く、しかも手足、とりわけ膝の付近に好発するので、命を助けるのはもとより、生きていくうえで大切な手足を残す、それが残せるならなるべく損傷を少なくすることが治療面の課題でした。

以前は、肉腫が骨の内部に広がり、そのまわりのどこまで切除すれば安全かがわからず、そのため、やむなく手足の切断手術とならざるを得ませんでした。ところが、そのようなことまでしても、たちまち転移・再発して命を落とす羽目になることは前にも書いたとおりで、これが“不治の病”の汚名を着せられる原因となったのです。

しかし、80年代半ばごろから抗がん剤の進歩により、抗がん剤治療を強力に行うようになって飛躍的に生存率がアップし、かつては20パーセントぐらいだった5年生存率がいまでは70パーセント弱にまで上昇。固形がんの中で最も成功したがんといわれています。それとともに、画像診断の発達により肉腫の広がっている領域を正確に特定して切除できるようになり、患肢温存もまた飛躍的に広まったのです。


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