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放射線照射をしても インプラント再建ができる方法

監修●岩平佳子 ブレストサージャリークリニック院長
取材・文●町口 充
発行:2014年3月
更新:2014年6月

インプラント再建の症例を検討

岩平さんは、インプラント再建を行った放射線照射患者64例についての検討を行った。

それによると、合併症などのトラブルなしに再建が完遂したのは、47例(73・4%)。うまくいかなくて途中でエキスパンダーやインプラントを抜去したのが、10例(15・6%)だった。

また、術後の被膜拘縮があった53例のうち、グレードⅠが17例(32・1%)、Ⅱが25例(47・2%)、Ⅲが11例(20・7%)だった。その後も定期的にフォローできた51例を追跡調査したところ、4年以上を経て被膜拘縮のグレードが上がったのは2例だけだった。

具体的な症例を見よう。

Aさん(46歳)は左乳がんに対して全摘+腋窩リンパ節郭清を行い、リンパ節に転移を認めたため抗がん薬治療と50Gyの放射線照射を行った。

インプラントによる再建をAさんは希望し、照射の影響は軽度と思われたため、エキスパンダーを挿入。皮膚の伸展は順調に進み、8カ月後、インプラントに入れ換えたが、総注入量は280㏄でエキスパンダーの80%とした。再建後2年あまりが経過し、被膜拘縮はグレードⅠで大したことなく、Aさんは非常に満足している。

図5 放射線治療後の再建例

Bさんのインプラント再建(左胸)再建前は軟部組織の欠損が大きく、照射による皮膚の色素沈着もあった。保湿・マッサージ、エキスパンダーによる伸展を経て、インプラント再建。乳頭移植術後2年7カ月を経た時点。良好な結果を経ている

Bさん(51歳)。左乳がんに対して乳房温存手術+腋窩リンパ節郭清を行い、術後に50Gyの放射線を照射。しかし、温存手術から11年後に局所再発し、全摘手術。再建を希望し、病院からは自家組織再建を勧められたが、「体の他の場所に傷をつけたくない」と、岩平さんのクリニックに来院。

リスクを承知でインプラント再建を行うことにし、エキスパンダーを挿入後10カ月かけて皮膚を伸展(総注入量515㏄)。250㏄のインプラントに入れ換え、術後2年7カ月たったが、やや硬さはあるものの(グレードⅡ)、友人と毎月温泉旅行を楽しんでいる(図5)。

Cさん(36歳)。事前に十分な説明を受けないまま、全摘手術の際に乳腺外科医によりエキスパンダーを挿入。術後、再発予防の目的で放射線を照射(50Gy)。岩平さんのところを訪れた当時、照射部皮膚は変色し、熱感を認めた。

再建の続行を希望したため注入を追加するが、そのたびに発熱し、抜水、注入を繰り返す。エキスパンダー挿入から1年2カ月後、インプラントに入れ換えるが、3カ月ほどしたころから切開していない部分の皮膚に穴が開き、インプラントが露出。同時期に肺への転移も見つかったため、再建を断念してインプラントを抜去。

「諦めない熱意」が大事

岩平さんは語る。

「放射線照射をした方には、皮膚に穴が空いたりした場合は、自家組織に切り換えるか、再建を断念するか、どちらかだと思ってくださいと伝えています。病院によっては、放射線照射をした人にはインプラント再建は絶対にやらないというところもありますが、それは少し画一的な判断だと私は思います。大切なのは、患者さん自身がどれだけ再建を望んでいるかの決意、覚悟、真剣さ。なぜ再建したいのか、何を求めているかをしっかり考えた上で医者にかかるべきです。

医者の私としても、リスクについてしっかりと説明して、それでも諦めないという人には、あなたが諦めない限り私も諦めませんと、最後まで責任を持つことにしています。患者さんと医者の双方の決意と信頼関係がないと、決してやってはいけないのがインプラント再建だと思います」

64例について考察した上記の結果から、岩平さんは、術前にリスクについて十分な説明をしてもなお、インプラント再建を希望する場合は、「生理食塩水の注入をゆっくり行う」、「皮膚の状態に応じて注入量を調節する」、「インプラントを小さいものにする」などの綿密な伸展計画の下で行えば、安全な再建は可能と述べている。

手術と同時にエキスパンダー挿入を

これから乳がん治療に臨む患者さんで再建を望む人へのアドバイスとして、岩平さんは「乳がん手術と同時にエキスパンダーを入れておくこと(一期再建)」を勧めている。

その理由は、乳がん手術とは別に再建を始める場合は、エキスパンダー挿入時とシリコン挿入時の2回の手術が必要になってしまう。乳がん手術時にエキスパンダーを入れておけば、それを1回に減らせるからだ(図6)。

図6 一期再建を行う際の治療スケジュール例

岩平さんによると、エキスパンダーもインプラントも、放射線を照射しても壊れたり、折れることはないという。最初に入れておけば、「安全性も高く、被膜拘縮のリスクも少なくなるはず」と話す。

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