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手術前に腫瘍を縮小し、部分切除術で乳房温存

監修●黒井克昌 がん・感染症センター都立駒込病院副院長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2014年10月
更新:2015年1月


アンスラサイクリン系とタキサン系薬剤を順次投与

実際のレジメン(薬剤の用量や用法などの治療計画)をみてみよう。

まず、しこりの大きさや年齢、腋窩リンパ節転移の有無、病理学的悪性度やサブタイプを見極めて、化学療法を行うのか、ホルモン療法を行うのか、両者を併用するのか薬物療法を選択する。

術前化学療法で多く行われているのは、アンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤を順次投与する方法だ。それぞれ3カ月ずつ、計6カ月続けた後に手術をする。

HER2陽性の場合は、タキサン系薬剤に加えて、分子標的薬ハーセプチンの追加が考慮される。ハーセプチンは2011年から術前化学療法でも保険適用となった。

アンスラサイクリン系薬剤=アドリアシン(一般名ドキソルビシン)、ファルモルビシン(一般名エピルビシン)など タキサン系薬剤=タキソール(一般名パクリタキセル)、タキソテール(一般名ドセタキセル) ハーセプチン=一般名トラスツズマブ

FDAが術前化学療法薬を迅速承認へ

図3 薬剤の迅速承認のイメージ図

術前化学療法の進展に向け、医療界の動きが加速している。米国食品医薬品局(FDA)は2012年、乳がん術前化学療法においてpCRを迅速承認のエンドポイント(有効性を示す評価項目)として認めるガイドライン案を発表した。この流れはとても大きなことだと黒井さんは解説する。

「これまでの新薬承認は、再発・転移がんで承認されて、そのあとに補助療法として承認されるのが普通の流れでした。補助療法まで10年はかかってしまいますが、術前化学療法として承認されるとなると、術前療法の期間は6カ月前後なので、その段階で評価して申請ができるということです。そのまま承認されれば非常に速いペースで臨床に用いることができます。再発・転移で実績のある薬剤を術前にも適応拡大するという治療戦略のほか、新規での第Ⅲ相試験をもってくることもできます」(図3)

ターゲットとされているのは、HER2陽性タイプとトリプルネガティブタイプだという。術前化学療法が他のタイプよりもpCRに結びつきやいからだ。

迅速承認=医療の必要性に応じて早期の承認を許可する制度

日本でも臨床試験がスタート

今後の術前化学療法の課題は何か。

「予後を解析するときに、pCRが得られたかどうかで評価するのではなく、レジメンごとの比較が求められます。pCRの質を吟味しようということです」

日本でも術前化学療法としての承認を目指した新薬開発が始まっている。

「これまでに術前薬物療法としてハーセプチン、パラプラチンを用いた医師主導試験が行われ、ハーセプチンが術前抗HER2療法として承認されています。日本の臨床研究グループであるJBCRGではこれまでにタイケルブを用いた医師主導試験を行い、現在、パージェタ、カドサイラという抗HER2療法を用いた医師主導治験を行っています。これらの薬剤は再発乳がんでは承認されていますが、早期がんではまだ未承認。新しい薬が早く使えるようになれば、患者さんのメリットになります」

新薬の早期導入が期待される。

パラプラチン=一般名カルボプラチン JBCRG=Japan Breast Cancer Research Group タイケルブ=一般名ラパチニブ パージェタ=一般名ペルツズマブ カドサイラ=一般名トラスツズマブ・エムタンシン注

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