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病院とメーカー共同で臭いの主要成分の解明と消臭効果のあるパッドを研究中 乳がんの皮膚潰瘍による臭いから患者さんを開放したい!

監修●名取由貴 順天堂大学医学部附属練馬病院乳がん看護認定看護師
取材・文●黒木 要
発行:2018年6月
更新:2019年7月


乳がんによる皮膚潰瘍臭の消臭に向けて研究が始まる

乳がん患者が臭いと滲出液に悩まされている問題が、生活用品メーカー花王株式会社に持ち込まれた。そこから、両者の共同による臭いケア商品を想定した臭いの主要成分の解明とその消臭方法に関する研究が始まり、試作品を使っての消臭効果を検証。その結果を名取さんは、今年(2018年)の第26回日本乳癌学会学術総会(5月16~18日)で発表した。

検証方法は以下の通り。

検体は2種類で、①研究により明らかになった臭いの成分を混合した疑似乳がん皮膚潰瘍臭、②患者(A、B)さんの実際に使用したガーゼから一部切り出したもの。それぞれに対し、試作品をかぶせ密閉したガラス容器の中で30分曝露した。

臭いの評価は、臭気判定士を含む研究スタッフが臭いを嗅いでその強度を評価する「6段階臭気強度表示法(環境省)」と、ガスクロマトグラフ(計測器)による「臭気物質の定量的な計測」の2つの方法によって行われた。後者は専門的な分析・解析が必要なためここでは省略し、前者の評価結果のみを開示する。

■ガスクロマトグラフで臭いを分析した結果

乳がん皮膚潰瘍部の臭いは約300成分の揮発性成分からなるため、その中から主要成分として酪酸、イソ吉草酸、ジアセチル、ジメチルトリスルフィド、トリメチルアミンの5種に絞り込み、疑似乳がん皮膚潰瘍臭を作成した

6段階(0~5)の臭気強度は次のように分類される。

 0 : 無臭
 1:やっと感知できる弱い臭い
 2:何の臭いかわかる弱い臭い
 3:楽に感知できる臭い
 4:強い臭い
 5:強烈な臭い

その結果、疑似乳がん皮膚潰瘍臭は、4から1へと大幅に軽減。患者さんから採取したガーゼは、Aさんが3.5から2に、Bさんが1.5から1に軽減した。

この結果について、共同チームは消臭効果に��いては好感触を得たものの、今後、検証するサンプルの数、実際に患者に使ってもらうなど多くの課題があると指摘する。

共同チームでは、これらをクリアし実用化につなげたい意向だ。その時期については「なるべく早く……」とのことだが、乳がんの皮膚潰瘍臭に悩む人にとって待望の製品となることを期待したい。

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