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高齢者乳がんに対する診療の課題 増える高齢者乳がん~意思決定支援を重視した診療を

監修●西村誠一郎 静岡県立静岡がんセンター乳腺外科部長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2018年6月
更新:2018年8月


患者のニーズは何か

西村さんは「患者さんにとって何がいいか、医療界として模索しています。どこまで生きたいかは人それぞれ。平均寿命とは別に健康寿命というのがありますが、それはずっと低い。寝たきりや認知症になっても生かされている形が増えています。尊厳を考えた場合、自分が自分らしく生きられる年齢まででいいというのが、多くの人の考えなのかなと思います。70代前半の患者さんに対しては一生懸命治療し、それ以降は本人希望を重視します。何を目指すのか。緩和治療だけでいいという方も多くいます。我々の尺度で決めるべきではない。相手の考えを聞き出して、ニーズがどこにあるのかを聞き出さなければなりません」

しかし、医師と向かい合って堂々と自分の意見を話すことは、弱っている患者さんには酷かもしれない。そのようなときには、看護師が重要な役割を担う。さりげなく様子を見たり、会話など意思疎通を密にして患者さんとの信頼関係を作るのが仕事となる。西村さんは「意思決定を支援するのが非常に大事です」と話す。患者家族支援センターも心理的サポートに役立っている(図3)。

「人生を逆算して、この時点ではこれ、この時点ではこの治療をしましょうというのが理想です。望んでいない人に、治療をすることが妥当でないケースもあります」

患者さんの中には民間療法に走ったり、ドクターショッピングを繰り返したりするケースもあるが、「多くの方は最後まで面倒を見てもらえず、いずれ病院に戻ってきます。温かく見守って、繋ぎどころは残しておいてあげるのが大切。患者さんのニーズを汲み取るといっても、医学的妥当性とかけ離れている場合は説得しなければなりません。本人の不利益になるからです。食事療法など安易な方向に流れるのはわかりますが、立ち止まってほしい」と話す。

個人としての生き方を決めておく

西村さんに高齢者乳がんの治療についてまとめてもらった。

「十分な局所治療をすべきです。適切な治療を施す。みな家族背景も違うので、一律のやり方は向かないと思います。対応できる人には本人の同意を得てやりましょうとなるし、無治療が幸せという結論もあります。我々は100を目指して治療しますが、患者さんにはそれが幸せなのかは別です。我々の価値感がベストとは思って���ません。もう十分だからと、強い治療を望まないという人もいます。家族会議の中で個人の行く先を決めておくこと大事です。意思表示がはっきりしていると治療方針も決めやすくなります」

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