大阪ブレストクリニックに学ぶ、クリニック活用法 これからの乳がんは、クリニックで治療を受ける時代
化学療法を最後まで成し遂げるチーム医療の力

医師、看護師、薬剤師、放射線技師、理学療法士、事務員、さらに患者会といった自助グループも含めて、患者さんを支えるチーム医療の実現を芝さんは目指してきた。
というのも、乳がん治療は化学療法による副作用や合併症などで、つらくて治療をやめたいと言う患者さんを勇気づける精神的なサポートなどが必要だが、こうしたことは医師1人の力だけでできるものではないからだ。
たとえば大阪ブレストクリニックでは、抗がん剤の副作用対策は薬剤師の仕事だ。薬剤師は薬の重要性や副作用についての説明はもちろん、薬を使い続けられるよう患者さんを励ましていく、精神的な支援という重要な役目も担っている。
というのも、患者さんは副作用について事前に聞いておかないと、出てきてから驚いて自己判断でやめてしまい、抗がん剤治療を全うできないからだ。
「医師は、患者さんの病気を診るのが主体なので、薬の説明だけになかなか30分もの時間をかけることができません。それならその道のプロである薬剤師に責任をもってやってもらえばいい。薬剤師に時間をかけて説明してもらうほうが、患者さんからも質問しやすくていいと好評です」
こうして発揮されるチーム医療の強みが「化学療法の完遂率」という指標に反映されている。完遂率とは、化学療法が最後まできちんと行われているかどうかの目安だ。
「つまりサポートがしっかりしていれば、クリニックでもきちんとした抗がん剤治療が可能になるのです」
病診連携でクリニックの限界をカバーする
クリニックの限界と、それを補うためにしかるべき施設と連携していることを患者さんに理解してもらうことも大切���と、芝さんは強調する。
「患者さんのニーズにできる限り応えたいのですが、うちでできることと、できないことがあります。できないことは当院と連携している施設へ依頼することを患者さんにはお伝えしています」
手術なら乳房再建をインプラントで行う場合や乳頭のみの再建なら同院でできるが、患者さん自身の筋肉を利用して行う再建術は、近隣の関西電力病院の形成外科と連携して行う。
関西電力病院とは、他にも、手術後の放射線治療や病理診断で連携をはかっている。
「クリニックでできないことは、それができる施設に紹介します。そういったことをあらかじめ患者さんに知ってもらい、理解してもらうことが大切です」
芝さんは続ける。
「緊密な病診連携、診診連携があれば、クリニックでも大病院と遜色ない治療ができることを情報公開によって患者さんに知っていただくのも、大事なことなのです」
クリニックで治療する時代に向けて

「これからの乳がんは、クリニックで治療する時代になる」と芝さん。
大きな病院では、患者さんは溢れかえっていて、医師も患者さんも疲れ果ててしまっている。だからこそ、病院とクリニックで役割分担をするべきだと、芝さんは強調する。
「例えば、大病院では診断や手術をして、術後のフォローはクリニックで行うといったように、病診連携が普及していくことが望まれます」
とはいえ、その際に重要になってくるのが、信頼できるクリニックをどう選ぶかということだろう。
芝さんは、クリニックを選ぶ際の基準として、わかりやすいのは「手術件数」を見ることとアドバイス。
「年間20例以下といった少数のところは避けたほうが賢明でしょう。というのも手術は外科医だけでではなく、麻酔科医や看護師や放射線技師たちも関わるチームワークが必須ですから、ある程度手術件数をこなしていれば、乳がんに精通したスタッフがそろっていると考えられます」
また、化学療法の実施数・完遂率も参考になる。
大病院に一極集中となっている現在のがん治療。こうした情報をもとに、患者さんにはぜひ信頼できるクリニックを選び、活用してもらいたい。
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