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効果的な術後補助療法を行うための遺伝子検査法 遺伝子を調べて合理的な乳がん個別化治療を

監修:川端英孝 虎の門病院乳腺内分泌外科部長・東京大学医学部非常勤講師
取材・文:伊波達也
発行:2011年7月
更新:2013年4月

FDAの承認を得ている検査マンマプリント

[図5 70種類の遺伝子を調べるマンマプリント]
図5 70種類の遺伝子を調べるマンマプリント

基板の上に数千の遺伝子を載せ行われるマイクロアレイ技術

一方のマンマプリントは、オランダで開発された検査法で、2007年には米国医薬品局(FDA)の承認を得ています(図5)。こちらは70種類の遺伝子を調べ、1度に2万5千の遺伝子発現を検出するDNAマイクロアレイという技術により、その発現パターンから再発のリスクと、術後補助療法の治療効果について予測します。

検査の適応は、浸潤性乳がん、60歳以下、がんの進行度がステージ1もしくは2、腫瘍が5センチメートル以下、リンパ節転移が3個以内、術前化学療法・ホルモン治療を行っていないなどです。

検査は、マンモトーム、もしくは手術検体を用い、約2週間で検査結果が出ます。しかしながらオンコタイプDXと異なり、凍結検体が必要で、通常のホルマリン固定された検体からは検査できません。結果は、高リスクと低リスクに分類され、予後不良(5年以内の遠隔転移のリスクが高い)と予後良好に、クリアに分けられます。こちらも検査費用は38万円(+消費税)と高額で、同様に保険適用はありません。

「高額な検査ですが、再発のリスクや薬の有効性を事前に把握して、もし不必要であれば、抗がん剤治療を安心して回避できるので、患者さんにとっては大きなメリットになります」(川端さん)

既存のぶれの大きい病理検査に比べると遺伝子検査は再現性が高く、明確な数値によって治療効果予測が提示できることになったのです。

「たとえば、オンコタイプDXの場合、スコア13点の低リスクの人にホルモン療法を行うと10年間再発しない率は92パーセントで、抗がん剤を投与してもその割合は変わりません。これが、スコア35点の高リスクの人の場合は抗がん剤治療を行うことによって、再発率が30パーセントのところが20パーセントに低下するといったように説明することができます」(川端さん)

また、遺伝子検査によって、ホルモン受容体、HER2受容体の有無をダブルチェックできることもメリットの1つです。

オンコタイプDXやマンマプリントは、過去の臨床試験の検体を使い構築された検査法で、さらに別の臨床試験の検体を用い、検査が本当に機能しているのかどうかを検証したことが重要だ、と川端さんは話します。後ろ向きの研究という限界はあるものの、きちんとした裏付けのとれた検査法というわけです。

高額な検査費用が普及を阻む

しかし、現状として、我が国では、オンコタイプDX、マンマプリントのいずれも、まだまだ普及していません。先述したように、検査代が高価であることが1番の理由でしょう。普及の9割以上がオンコタイプDXですが、年間販売推計は200~300件といわれ、検査実施率の高い虎の門病院でも、昨年度で40件程度とのことです。

「検査代が高価なこともあり、検査の勧め方には配慮が必要ですが、グレーゾーンに該当する患者さんには、できるだけ情報提供するようにしています」(川端さん)

保険が適用となっているアメリカでは、普及度は高く、ある有名病院のオンラインセカンドオピニオンコーナーでは、3年くらい前から、まずオンコタイプDXの数値がわかっていることが議論の前提になっているようです。

進行中の臨床試験の結果が普及へのカギ

今後、我が国におけるオンコタイプDXの普及に向けて期待されているのが、TAILORxという臨床試験です。アメリカの国立がん研究所が出資し、同研究所主導のすべての乳がんの臨床試験群が参加している大規模な試験です。1万人以上の患者さんを対象に、再発スコア26以上の人にはホルモン療法に加えて全員に抗がん剤を投与し、スコア11未満の人は全員抗がん剤を投与しません。またスコアが11から25の人は無作為に、抗がん剤投与をする群としない群に振り分けて、その結果を検証するという試験です。

この試験は患者登録がすでに終了し、結果待ちの状況です。マンマプリントも同様にMINDACT試験が進行中で、これらの試験で検査の信頼性がさらに確認されれば、普及に拍車がかかると思われます。

これらの試験をはじめ、最新の臨床試験では参加した患者さんの検体が中央で管理されており、画期的な新しい検査法が出現すれば、迅速にその効果が確認できるプラットフォーム(組織銀行)が整備されています。このような研究体制の整備により、乳がんの個別化治療がさらに進歩していくことは間違いなさそうです。

オンコタイプDXやマンマプリントをはじめとする遺伝子検査は、非常に有望な検査ではあるものの、あくまでも診断から治療の流れのなかでの1つのオプションであることを認識すべきだと川端さんは話します。

「オンコタイプDXやマンマプリントを1点豪華主義のような形で行うことはあまり意味のないことで、診断、手術、術後療法にいたるまで、迅速かつ的確に医療を遂行できる地道な体制作りが最も重要であることは変わりません。さらに精度の高い臨床試験を通じた研究のプラットフォームの構築が結局患者さんの利益に最もつながる」

川端さんは、そう強調していました。


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