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新ガイドラインで推奨。国際的にも認められた重要な選択肢 乳がんの術後補助化学療法として新たに注目を集めるTC療法

監修:向井博文 国立がん研究センター東病院化学療法科医長
取材・文:坂本悠次
発行:2010年10月
更新:2014年1月

TC療法登場の背景に長期生存者の増加

TC療法は、3週間ごとの薬剤投与を1サイクルとして、合計4サイクルを繰り返す治療法です。AC療法やEC療法などの補助化学療法と同じように、外来でも安全に行うことができます(図)。

[TC療法の治療スケジュール]
図:TC療法の治療スケジュール

TC療法が大きな注目を浴びる背景には、乳がん治療の進歩によって治癒する患者さんが増えてきたことと、再発したとしても長期に生存する患者さんが増加してきたといううれしい事実があります。

「アンスラサイクリンは乳がんの再発予防に有効な抗がん剤です。しかし、頻度は低いものの、副作用として、重篤な心筋障害やうっ血性心不全などを招く心毒性が発現したり、他の抗悪性腫瘍剤と併用した際に2次性の白血病や骨髄異形成症候群()が発生したりする場合があります。これらは抗がん剤治療終了後、長期間経過してからでも発現する可能性があります」

9735試験においてはTC療法に、アンスラサイクリンに特徴的な心毒性や2次性白血病などの発症という副作用、有害事象は報告されていません。長期生存を見据えた術後補助化学療法が必要とされる中、新たに登場してきたのがTC療法であり、乳がん専門医がTC療法に大きな関心を寄せるのは当然といえるでしょう。

骨髄異形成症候群=血液細胞のもととなる骨髄中の造血幹細胞ががん化する病気。

大きなメリットは吐き気や嘔吐が避けられること

加えて、TC療法には、アンスラサイクリンを含んだ補助化学療法にはない優れたところがあります。

「TC療法が優れている第1の点は、患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を及ぼす、吐き気や嘔吐などの副作用が明らかに少ないことです。かたやアンスラサイクリンといえば、吐き気や嘔吐などが代表的な副作用です。TC療法の登場はこの点において、患者さんにとって大きなメリットといえます」

TC療法が優れている第2の点は、65歳以上の高齢の患者さんでも、アンスラサイクリンを含む補助化学療法と比べ、重篤な有害事象が増加するわけではなく、安全に行えることです。

TC療法の有害事象の発現率は、65歳以上と65歳未満では同様と報告されています。高齢の患者さんは、ほかの疾患を抱えていることも少なくありませんが、TC療法によって若年の患者さんより有害事象が増えるというわけではないと確認されています。

TC療法が優れている第3の点は、HER2タンパクが過剰発現しているHER2陽性の中間リスク群の乳がん患者さんに、ハーセプチンの投与開始と同時並行でTC療法が進められるかもしれないことです。

「HER2陽性の患者さんには、ハーセプチンの1年間の投与が必須とされています。しかし、ハーセプチンもアンスラサイクリンも心毒性の副作用が認められるため、ハーセプチンとアンスラサイクリンを含む補助化学療法とは同時並行で進めることができません。しかし、TC療法ならば、タキソテールに心毒性が認められないことから、その開始とともにハーセプチンの投与を始められる可能性があるため、相乗的な治療効果や治療期間の短縮などが期待できるというわけです」

現在、アメリカでは、TC療法とハーセプチンの投与を同時並行で進める治療法が臨床試験として取り組まれており、その結果に大きな関心が寄せられています。

皮疹には保湿クリームやステロイド外用薬の塗布

一方、TC療法にも注意を要する特徴的な副作用がいくつかあります。代表的な副作用の1つは全身倦怠感。これにはステロイドの内服が効果を発揮する場合があります。

「もう1つの代表的副作用は手足の皮がむける手足症候群のような皮疹や、爪の変形などの皮膚障害です」

皮疹の原因は、はっきりとはわかっていませんが、1つはタキソテールに対するアレルギー反応から生じる薬疹と考えられます。部分的な症状にとどまっていれば、保湿クリームやステロイド外用薬の塗布などで対処できることもあります。しかし、広範囲に症状が現れたときは、内服薬などによる治療が必要となります。

「TC療法とAC療法では、副作用の種類が異なります。治療開始前に、予想される副作用と日常生活での注意点について、医師や看護師、薬剤師から説明を受けておきましょう。ご家族のご理解・ご協力も必要です。これは抗がん剤治療一般にいえることですが、あらかじめ必要な対策をたてておくと、副作用の悪化を防ぐことにつながります」

個別化治療へ進む乳がん補助化学療法

乳がんの補助化学療法は常に進化しています。今後は、再発リスクなどにより治療法を選択するのではなく、個々の乳がんの治療効果予測因子などを探り、最も適した治療法を選択して行う個別化治療へ向けて、その歩みを進めていくのではないかと期待されています。

「TC療法にしても、今は中間リスク群の患者さんを主な対象として行っていますが、低リスク群や高リスク群の患者さんの中にも、TC療法でより大きな治療効果を得られる方がいる可能性があります」

乳がんでは、アンスラサイクリンの効果と関係があるといわれるトポイソメラーゼ2α()をはじめ、数多くの治療効果予測因子の研究が意欲的に進められています。

「将来的には、『TC療法が効く』という治療効果予測因子を持つ患者さんのみに、TC療法を行うという個別化治療へ進んでいくでしょう」

今回、乳がんの新ガイドラインでアンスラサイクリンを含まないTC療法が推奨されたことは、乳がん補助化学療法の新たな飛躍に向けての確かな1歩といえます。

トポイソメラーゼ2α=細胞が分裂・増殖する時に、DNAをいったん分断し、再結合するために必要な酵素の1つ

[乳がんに対する主な併用化学療法]

治療法 薬剤 治療期間 術後療法サイクル数
クラシカルCMF シクロホスファミド
メトトレキサート
フルオロウラシル
4週ごと 6
AC ドキソルビシン
シクロホスファミド
3週ごと 4
EC エピルビシン
シクロホスファミド
3週ごと 4
CAF シクロホスファミド
ドキソルビシン
フルオロウラシル
3週ごと 6
CAF(分割) シクロホスファミド
ドキソルビシン
フルオロウラシル
4週ごと 6
FEC フルオロウラシル
エピルビシン
シクロホスファミド
3週ごと 6
CEF(CanadaNCI) シクロホスファミド
エピルビシン
フルオロウラシル
4週ごと 6
TAC(BCIRG001) ドセタキセル
ドキソルビシン
シクロホスファミド
3週ごと 6
TC(USOncology) ドセタキセル
シクロホスファミド
3週ごと 4
AC→T* ドキソルビシン
シクロホスファミド
3週ごと 4
   
ドセタキセル 3週ごと 4
AC→P* ドキソルビシン
シクロホスファミド
3週ごと 4
   
パクリタキセル 3週ごと 4
FEC→T* フルオロウラシル
エピルビシン
シクロホスファミド
3週ごと 3
   
ドセタキセル 3週ごと 3
注:薬剤はすべて一般名
日本乳癌学会:科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン;1. 薬物療法、金原出版、東京、2010より抜粋
*がんサポート編集部にて追加

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