術前化学療法のメリット、術前ホルモン療法の可能性 術前薬物療法をうまく取り入れて、自分に合った治療法を見つけよう!
手術前のホルモン療法にはこんなにメリットがある
術前化学療法は広く行われ、市民権がえられてきているが、術前ホルモン療法は、現在臨床試験が進められている。その結果によっては、将来、術前ホルモン療法が標準治療となるかもしれない。
現在、再発予防のホルモン療法は、術後に行われるのが標準的。治療期間は5~10年である。
「術後療法だとその効果を確認できないので、ホルモン療法がまったく効かない人にも、効く人と同じく5~10年のホルモン療法が行われてしまいます。その点、術前ホルモン療法を行えば、手術前に効くかどうかをはっきりさせることができるのです」
このように、術前療法には、薬物療法の効果を確認できるという大きなメリットがある。かつて乳がんのホルモン療法では、タモキシフェン(商品名ノルバデックス等)が主に使われていたが、現在では、閉経後の患者さんを対象にしたアロマターゼ阻害剤というタイプのホルモン剤も登場している。アロマターゼ阻害剤には、フェマーラ(一般名レトロゾール)、アリミデックス(一般名アナストロゾール)、アロマシン(一般名エキセメスタン)という3種類の薬がある。
「術前治療なら、ホルモン剤が効くかどうか、ホルモン剤の選択に役立つだけでなく、そのホルモン療法の効果を見ることで、化学療法が必要かどうかを判断することもできるかもしれません」
ホルモン療法が効いていれば、化学療法をする必要がないかもしれない。抗がん剤治療を省略できる患者さんを選び出すことも、術前ホルモン療法の1つの目的といえそうだ。
術前ホルモン療法の臨床試験が進行中
2種類のホルモン剤による術前ホルモン療法の比較試験が報告されている。図に示したP024試験がそれだ(図3)。手術の前に、フェマーラあるいはタモキシフェンの治療を行い、がんが小さくなる割合を比較している。CR(完全寛解=がんがすべて消えた)とPR(部分寛解=がんが半分以下に減少)を合わせた割合がフェマーラ群では60パーセント、タモキシフェン群では41パーセントとなっている。

また、PEPIスコアといって、腫瘍の大きさの変化、リンパ節転移の有無、増殖マーカーなどを点数化し、その点数で3グループに分けて解析してみると、点数が低いグループほど、無再発生存率が高いこともわかった(図4)。

「つまり、腫瘍が小さくなった割合、リンパ節転移の有無、増殖マーカーの変化などを見ることで、術前ホルモン療法の後の再発リスク(予後)が予測できるかもしれないということです。個別化治療を展開する可能性が出てきたと考えていいでしょう」
まだまだ検討段階だというが、研究は着々と進められている。 我が国で現在進行中の臨床試験としては、NEOS試験がある。手術前にホルモン療法を行い、その結果に応じて、化学療法の必要な人と、必要のない人を見極められるようにするのが目的だ。
まずフェマーラを6カ月間服用し、次に手術。そこで2つのグループに分かれ、一方はフェマーラのみ、もう一方は化学療法後、フェマーラを服用する。 「術前ホルモン療法は、まだ評価の定まった治療法ではなく、現在は臨床試験として行われています。この試験が進行中で、結果が出るまでにはもう少し時間がかかります。
術前ホルモン療法の今後の課題としては、どのホルモン剤を使うのがいいのか、また術前にどのくらいの期間服用するのがいいのか、その治療効果の良し悪しの判断基準の作成など、解決すべき課題が多くあります」
重要性を増す術前薬物療法
現在、大阪医療センターで、術前の薬物療法を行っている患者さんは全体の約4割。その割合は、過去5年の期間だんだんと増えてきた傾向にあるという(図5)。

「乳がんと診断されるとすぐに手術と考えられる方が多いと思いますが、1つの治療法の選択肢として、術前の薬物療法があるということを患者さんにはぜひ知ってもらいたいですね」
今後、乳がんの術前薬物療法の重要性はますます増してくるにちがいない。
(構成/柄川昭彦)
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