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乳房再建の方法をよく知って、イメージ通りの乳房に 不安にならないで――全摘しても自然な乳房は取り戻せる

監修:久留宮康浩 名古屋第二赤十字病院乳腺外科部長
取材:「がんサポート」編集部
発行:2010年1月
更新:2013年4月

乳房切除した人の約6割が乳房の再建を希望した

名古屋第二赤十字病院では、07年1月から09年3月までに200例の乳がん手術を行っている。そのうち乳房温存手術が77例、乳房切除手術が117例だった。この乳房切除例のうち、64例が再建を行い、53例が再建を行わなかった。

「手術について患者さんに説明するとき、1期的再建ができるという話をすると、乳房切除の適応になる人の6割くらいが、再建を希望します。若い人はもちろん、高齢の方でも、ないよりあったほうがいいとおっしゃいますね」

保険診療で再建手術を受けられることも、追い風になっているのだろう。自己組織を利用する方法なら、乳がんの手術費に3割負担ならば8万円をプラスする程度の金額で、1期的再建を受けることが可能だ。

ただ、シリコンを入れる場合には健康保険が利用できない。ティッシュエキスパンダーを挿入するところまで健康保険で行ったとしても、シリコンを入れる手術は自由診療となるため、乳がんの治療費以外に、50~100万円程度必要になる。

[人工乳房]

図:人工乳房

大胸筋の下に組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)を挿入する

生理食塩水を定期的に
注入して徐々に皮膚を
伸ばす

大胸筋の下に空間を作り、人工乳房を挿入する


名古屋第二赤十字病院で再建手術を受けた64例の内訳は、広背筋皮弁が52例、腹直筋皮弁が6例、人工乳房が6例となっている。自己組織による再建を選んだ患者さんが多かったことになる。

もちろん、治療法選択のポイントとなるのは治療費だけではない。それぞれの方法が持つ利点と欠点を検討し、自分にとって最良の方法を患者さん自身が選択することになる。

「自己組織を利用する方法だと、背中やおなかに傷跡が残りますし、入院期間も4~14日と長くかかります。その点、人工乳房なら乳がん手術の傷跡だけで、入院期間も4~7日と短くてすみます。ただ、人工乳房に比べると、自己組織のほうがより柔らかく、下垂気���の自然な感じの乳房を作ることができます」

どちらにも利点と欠点があるが、名古屋第二赤十字病院では、再建手術を受けた患者さんの約9割が自己組織を利用する方法を選択したことになる。

「広背筋皮弁も腹直筋皮弁も安全に行える手術です。おなかのほうが脂肪を多く取れるので、大きな乳房を作るには、腹直筋皮弁のほうが適しています。ただ日本人女性の場合、欧米人と比べてそこまで乳房が大きくないので、多くは広背筋皮弁で再建できます」

広背筋皮弁が行えないのは、背中に手術の傷跡がある場合。同様に、腹部に手術の傷跡がある人は、腹直筋皮弁を受けることができない。また、将来妊娠する可能性がある人にも、腹直筋皮弁は行われないことが多い。

[拡大広背筋皮弁]

図:拡大広背筋皮弁

乳房切除後、広背筋を皮膚の一部とともに血管を
つないだまま再建する胸に反転させ、移植する

移植した皮膚の部分と切り取った広背筋の位置に
傷跡が残る


[腹直筋皮弁]

図:腹直筋皮弁

腹直筋を皮膚の一部とともに血管をつないだまま、トンネル状にした
お腹の下をくぐらせ、再建する胸に移植する

移植した皮膚の部分と切り取った
お腹に傷跡が残る


乳房再建手術では、脂肪壊死や皮弁壊死といった、血流が不十分なために組織が死んでしまうことがまれにある。ただし、頻度は低い。

さて、乳房再建手術を受けたいという場合、どこで受けることができるのだろう。久留宮さんは、乳腺外科を専門としながら、乳房再建手術も行っているが、こうしたケースはかなり珍しい。日本では、乳房再建手術は形成外科で行っていることが多い。

そこで、乳房再建手術を希望する場合、医療機関探しが必要になることがある。きちんとした乳がんの手術ができ、なおかつ形成外科のある医療機関ということになるだろう。

乳がんの手術後には術後治療が必要になる

乳がんの手術を受けた後には、再発を予防するための術後治療が必要になる。乳房温存手術でも、乳房切除手術でも、手術を受けた時点で、ごく小さながんが、すでに体のどこかに転移している可能性があるからだ。それが大きくなって再発につながるのを防ぐために、抗がん剤やホルモン剤による全身治療が行われている。ここでは、ホルモン剤による術後治療について解説しよう。

「ホルモンレセプター陽性の乳がんであれば、ホルモン療法が行われます。患者さんが閉経前なら抗エストロゲン薬のタモキシフェン(商品名ノルバデックス等)、閉経後ならアロマターゼ阻害剤が使われるようになっています」

ホルモンレセプター陽性の乳がんは、女性ホルモンのエストロゲンを利用して増殖する。そこで、エストロゲンを利用できないようにして、がんを弱らせるのである。

抗エストロゲン薬は、エストロゲンが乳がんに作用するのを防ぐ。これに対し、アロマターゼ阻害剤は、閉経後の人を対象にした薬で、体内でエストロゲンができるのを阻害する働きがある。閉経後の患者さんであれば、タモキシフェン以上の効果が得られることが臨床試験で明らかになっている。

アロマターゼ阻害剤には、フェマーラ(一般名レトロゾール)、アリミデックス(一般名アナストロゾール)、アロマシン(一般名エキセメスタン)という3種類の薬がある。

「3種類の薬とも、術後治療に用いる場合、2年間より5年間続けることで、再発率がより抑えられるという臨床試験の結果が出ています。継続することが大切な治療ですね」

現在は、5年以上服用を続けることで、さらに高い効果が得られるのかどうかを調べる臨床試験が行われている。

また、タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤を比較する臨床試験も、これまでにいくつか行われてきた。その中の1つである「BIG1-98」試験は、タモキシフェンとフェマーラの比較試験だが、開始から10年が経過した時点での解析が行われ、興味深い結果が出ている。閉経後の人がフェマーラを5年服用することで、再発や死亡のリスクを低下させ、生存期間を延長することも示唆していたのだ。

「印象的なデータでした。術後治療は効果を実感しにくいのですが、こうした大規模臨床試験の結果を見る限り、使用し続ける価値のある薬だと思います」

[閉経後乳がんにおけるフェマーラの効果]
図:閉経後乳がんにおけるフェマーラの効果

[BIG1-98]Mouridsen HT et al:SABCS 2008 Abstract #13を一部改変

関節症状が出る人は薬がよく効いている

アロマターゼ阻害剤を服用していると、副作用として関節痛に悩まされる人がいる。長期間服用する薬なので、患者さんにとってはなかなか大変だ。

「確かに関節痛を訴える患者さんはいますが、それで薬を中断しなければならなくなる人は、決して多くはありません」

また、関節症状が出る人のほうが、再発が抑えられ、生存にも影響するというデータもあるそうだ。

「関節が痛む患者さんには、それだけ薬が効いているためですよ、という話をしています。長く続けることが大切な治療ですからね」

乳房を温存するのも、再建するのも、手術後のQOLを低下させないためである。手術後の人生にとってもう1つ大切なのは、がんの再発を防ぐこと。そのためにも、しっかりと術後治療を継続したいものだ。

(構成/柄川昭彦)

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