1. ホーム  > 
  2. 各種がん  > 
  3. 乳がん  > 
  4. 乳がん
 

温存療法に次いで、「乳房全摘+乳房再建」が見直されている 「乳癌診療ガイドライン」をわかりやすく読み解く

監修:池田正 帝京大学医学部外科学教授
取材・文:祢津加奈子 医療ジャーナリスト
発行:2008年10月
更新:2013年4月

外科手術以外の治療法も進展

外科療法は、9月の改訂では、鏡視下治療やノンサージカルアブレーション(非手術的消滅療法)など、従来の外科手術とは違う方法がガイドラインに登場するといいます。ただし、標準治療ではなく、試験的治療で、推奨グレードはC。すなわち、まだ十分なエビデンスはないので、臨床で実施する際には慎重に、というレベルです。

具体的には、ラジオ波焼灼療法や集束超音波療法、凍結療法などです。ラジオ波焼灼療法は、すでに肝臓がんの治療に用いられている治療法で、体の外からがんに直接針を刺してラジオ波で焼きとばす方法です。集束超音波療法も、子宮筋腫の治療などで行われており、患部に超音波を集中させて組織を凝固壊死させる方法です。凍結療法は、腎がんなどでも応用されている患部を凍結させて壊死させる治療法です。

いずれも他の病気やがんでは、すでに治療に用いられている治療法で、外科手術に比べて回復が早く、美容的に優れているといわれています。

「いずれも特殊な治療装置が必要で、まだごく一部で行われている程度です。ただ、ラジオ波焼灼療法は肝臓がんなどにすでに行っている施設ならば、すぐに乳がんにも応用できると思います。ただし、これらの治療法ではがん組織が採取されてこないため、後の治療方針決定に大事な病理学的検査ができないという欠点もあります」(池田さん)など、まだ、普及はこれからという段階です。

また、乳房全摘に匹敵する手術として、全乳腺切除術という方法も、「ある程度安全とわかり、じょじょに増えている」(池田さん)そうです。

これは、電気メスや内視鏡を使って、乳房の皮膚を残して乳腺組織を全て切除する方法で���。

米国では、乳輪や乳頭も切除してしまうそうですが、日本では乳輪や乳頭も皮膚と一緒に残して内部の乳腺組織だけをとります。乳房が小さい日本人の場合、見た目もあまり変わらないことが多いそうです。乳房が大きめの人は再建術を、といっても乳首や乳輪が残っているので、ウォーターバッグなどを入れて膨らませるだけで、きれいな乳房を取り戻すことができます。

今では、検診にマンモグラフィが普及し、多くの非浸潤がん(がん細胞が発生した乳管の中にとどまっていて外に出ていない段階)が見つかるようになりました。その中で「広範囲にがんが広がっていたり、MRIでがんが多発していることがわかった人」が全乳腺切除術の対象です。基本的には、がんが乳頭直下になければ受けられるそうです。

乳がんの外科療法では、これまで以上にさまざまな治療の選択肢が生まれ、美容的な面でも乳房再建術が身近なものとなりつつあるようです。

[乳がん術式の変遷(乳がん術式実態調査結果)]
図:乳がん術式の変遷(乳がん術式実態調査結果)

2006年回答355施設27966症例(日本乳癌学会)

急速に広まるセンチネルリンパ節生検

一方、ここ数年で急速に普及したのが「センチネルリンパ節生検」です。センチネルリンパ節生検は、病巣から最初にがんが転移するリンパ節、すなわちセンチネル(見張り)リンパ節を見つけて病理検査をし、転移がなければその先のリンパ節にも転移はない。したがって腋窩リンパ節の郭清を省くことができると考える検査です。転移の有無が微妙な1期、2期の患者さんは、この検査のおかげで脇の下のリンパ節をとらずにすむことも多いのです。腋窩リンパ節の郭清を省くことができれば、腕のリンパ浮腫や知覚異常などの合併症を減らすこともできます。

日本乳癌学会が登録施設(乳がん専門医が常駐している施設)を対象に行っている統計によると、2004年には60パーセントだった実施率が2006年には90パーセントにまで急増しています。一般病院の平均に比べると高いかもしれませんが、温存療法の普及に20年を要したのに比べると雲泥の差です。

センチネルリンパ節を見つける方法として、色素法、ラジオアイソトープ(わずかな放射線を発する物質)を使うRI法、両者の併用法があり、ガイドラインでは併用が推奨されています。しかし、2006年の統計では併用している施設は約3割。約6割は色素法単独で検査を行っています。しかし、色素法単独では、「習熟に時間がかかる上、複数のセンチネルリンパ節があった場合には、1個だけとって他を見落とす危険もありうる」と池田さんは指摘しています。ただ、ラジオアイソトープを使うRI法は、アイソトープを使うためには放射線管理施設が必要なので、どの病院でも行えるわけではありません。長期間の成績が出ていないため、日本ではまだセンチネルリンパ節生検は臨床試験という位置づけになっているそうです。

センチネルリンパ節生検は、もともと「センチネルリンパ節をとって転移の有無を調べた上で、さらに腋窩リンパ節の郭清を行ってセンチネルリンパ節生検の結果があっているかどうかを確認してから始まった検査」(池田さん)だそうです。そこで、偽陰性率、すなわちリンパ節転移があるのにないと出てしまう率が、数パーセントと極めて低いことがわかり、「大まかに言うと約96パーセントの人に有益」ということで、爆発的に普及したのです。

これまでに何万例という患者さんに実施されていますが、池田さんによると「予想以上に脇の下のリンパ節の再発率は低い」そうです。もちろん、他の臓器などへの遠隔転移率は同じですが、センチネルリンパ節生検をした結果、転移がなくて腋窩リンパ節郭清を省いた場合、脇の下のリンパ節に再発する率は極めて低いのです。池田さんも、「これまで1000例近くにセンチネルリンパ節生検を行っていますが、脇の下に再発した人は1人もいない」そうです。

なお、数パーセントの偽陰性の人がどうなるか、生存率、再発率などの予後については海外で臨床試験が行われているそうです。

[手法別センチネルリンパ節生検施行施設数(乳がん術式実態調査結果)]
図:手法別センチネルリンパ節生検施行施設数(乳がん術式実態調査結果)

(日本乳癌学会)

[センチネルリンパ節生検施行症例数(乳がん術式実態調査結果))]
図:センチネルリンパ節生検施行症例数(乳がん術式実態調査結果)

(日本乳癌学会)


同じカテゴリーの最新記事