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乳がんのホルモン療法最新ホット情報 抗エストロゲン剤5年間服用後、さらにアロマターゼ阻害剤5年間服用を

監修:内海俊明 藤田保健衛生大学病院乳腺外科教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2008年8月
更新:2013年4月

途中から2重盲検法が解除された臨床試験

フェマーラによる「MA・17」試験は、フェマーラでの継続治療を行ったほうがよいという、あまりにも明確な結論が出たため、30カ月で盲検解除となった。本当の薬か偽薬かを知らされずに薬を服用し、効果を判定する試験方法を2重盲検法というが、フェマーラを継続したほうがいいことが明らかになった以上、そのまま試験を続けるのは倫理的に問題があると考えられたからだ。

そこで、臨床試験の参加者に服用しているのがフェマーラなのか、偽薬かを知らせ、偽薬を服用していた人に対して、希望すればフェマーラを服用できるようにしたのである。

プラセボを服用していた2594人のうち、もう治療はいいと無治療を選んだ人が804人、フェマーラを服用し始めた人が1579人いた。この「無治療群」と「フェマーラ服用群」で、無病生存率などにどのような変化が出たのかを示すデータが、最近になって発表されているそうだ。

「断っておきますが、患者さん自身が、無治療か治療するかを選択しているのですから、当然、2つのグループの患者さんたちのバックグラウンドには、それなりに違いが現われています」

両グループの患者背景を見ると、その違いがわかる。この中で、予後に最も影響を及ぼしそうな項目は「診断時のリンパ節転移」である。陽性の人(リンパ節転移があった人)の割合は、フェマーラ服用群では47.5パーセント、無治療群では38.8パーセントとなっている。つまり、フェマーラ服用群には、再発のリスクが高い人が多かったことになるのだ。

術後化学療法を受けた人の割合も、フェマーラ服用群のほうが多い。これも、リンパ節転移のある人が多いため、化学療法が追加されているのだと考えることができる。

「この情報を見る限り、どちらかといえばフェマーラ服用群のほうが不利といえるでしょうね」

無作為化試験のように患者背景がそろわないので正確な比較ができないのだが、フェマーラ服用群は無治療群よりも再発リスクの高い人が多くいる状況で行われた臨床試験��考えればいいだろう。

無治療期間があっても再発抑制効果が期待できる

データを見てみよう。フェマーラ服用群と無治療群の無病生存率(図4)や、遠隔無病生存率(図5)を比較したグラフを見ると、フェマーラ服用群のほうが高い値を示している。遠隔無病生存率とは、遠隔再発(転移)を起こさずに生存している人の割合のこと。

[図4 レイトエクステンディドアジュバントの効果(無病生存率)]
図4 レイトエクステンディドアジュバントの効果(無病生存率)

Paul Goss et al.Clin Oncol 26.2008

[図5 レイトエクステンディドアジュバントの効果(遠隔無病生存率)]
図5 レイトエクステンディドアジュバントの効果(遠隔無病生存率)

Paul Goss et al.Clin Oncol 26.2008

また、再発のリスク、遠隔再発のリスク、死亡のリスク、対側乳がん発生リスクのいずれもが、大幅に低下することも明らかになっている(図6)。

[図6 レイトエクステンディドアジュバントの効果(各抑制率)]
図6 レイトエクステンディドアジュバントの効果(各抑制率)

Paul Goss et al.Clin Oncol 26.2008

「この結果からわかることは、タモキシフェンを5年間服用した後、しばらく無治療期間があったとしても、フェマーラの服用を始めることで、その時点からの再発を防ぐのに効果がありそうだ、ということです」

エビデンスレベルの高い臨床試験ではないが、「フェマーラ服用群やや不利」と判断できる患者背景から出てきたデータであるだけに興味深い。

このように、術後タモキシフェン5年服用後、しばらく治療を行わない期間を経て行われるエクステンディド・アジュバント療法を、レイト・エクステンディド・アジュバント療法という。この臨床試験では、治療の中断期間は1~7年ほどで、中断期間の中間値は2.8年だった。

アロマターゼ阻害剤による治療では、エストロゲンが抑えられるため、副作用として骨に悪影響が現れやすい。このレイト・エクステンディド・アジュバント療法でも、骨折や骨粗鬆症などの有害事象が増えることが明らかになっている(図7)。

[図7 レイトエクステンディドアジュバントの有害事象]
図7 レイトエクステンディドアジュバントの有害事象

Paul Goss et al.Clin Oncol 26.2008

治療後に閉経している人にもフェマーラが勧められる

この新たなデータを、実際の治療に当てはめて考えてみよう。

タモキシフェンによる5年間の治療が終わった時点で、すでに閉経を迎えている人なら、とくに難しいことはない。「MA・17」試験の結果に基づき、フェマーラの服用を5年間続けることが勧められるわけだ。それによって、無病生存率の改善や再発リスクの低下が期待できる。

新しく出たデータを生かせるのは、タモキシフェン5年間が終わった時点で、まだ閉経を迎えていないケースである。現在、すでに数年前にタモキシフェン5年の治療を終了している人も多いに違いない。

「日本人は欧米人に比べると閉経前に乳がんになる人が多いので、タモキシフェンを5年のんだけれど、まだ閉経していないという人はたくさんいます。とくにリンパ節転移があったような再発リスクの高い人は、治療の中断があったとしても、閉経したところからフェマーラの服用を始めるといいと思います」

現在、閉経前で、タモキシフェンを服用している人も、将来閉経を迎えたときにどうするかについて、主治医と相談しておくとよいだろう。そのときに、レイト・エクステンディド・アジュバント療法も1つの選択肢になることを覚えておいてほしい。

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