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孤立した若年乳がん患者の心を支えるグループケア 悩みを打ち明け、聞いてもらえる、耳を傾ける――それが道を拓く

監修: 齊藤光江 東京大学付属病院乳腺内分泌外科講師
順天堂大学乳腺センター乳腺科客員助教授
取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2006年2月
更新:2014年2月

寒色から暖色、暗色から明色へ

[アンケート結果:気分を色に譬えるとどんな色?]
(30代と40代のみ)
世代 1年前 1週前 閉会時 1週間で
変化
1年で
変化
安定
30    
30  
30 深緑  
30    
30 深緑  
30 解答無 解答無      
30 ベージュ      
30    
40    
40  
40 深緑  
40    
40 明色 暖色  
40    
40 濃紫 ベージュ    
40 深緑 ベージュ    
40 そう快な    
40 そう快な  

ところで、この会はもともと若年患者さんの心のケアが目的で始まっているが、その効果はどうなのだろうか。実際に効果が上がっているのだろうか。

齊藤さんは正直にこう答える。

「うつが危機的な状態にあった患者さんを何とかしてあげたいという衝動的な思いでこの会を立ち上げたので、こ��が本当にいいのかどうかはまだわかりません。参加する患者さんの表情、笑顔が大事で、評価は二の次でいいと思っています」

とはいえ、評価をしないというわけではない。評価の方法を模索中なのである。

「患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)全体がわかるような評価法があるといいんですが、今新しい尺度として色による変化で評価できないか、試みているところです」

例えば、3回目の会では参加者に好きな色で名札を作成してもらったところ、10数人の患者さんのうち、2人が黄色と水色を用いた以外は、全員橙色を用いた。これに対して数人の支持者のほうは1人が赤を使った以外はみな緑色を用いたという。

4回目では、多くの患者さんの希望で、心の表現のためのカラーセラピーの講義を受け、実際に色で気持ちを表現する実習を体験している。

また、色についてのアンケート調査も試みている。この調査は、第5回目の1周年記念の会で行われたもので、特別に音楽会と交流会を兼ねて行い、若年患者さんだけでなく、広く参加を呼びかけたこともあって、120人が参加。だから、中高年の患者、支持者も調査に加わっている。

アンケートは「気分を色に譬えるとどんな色になるか」という質問を、「現在と過去」に分けてそれぞれ答えてもらっている。結果、「総じて、1年前は寒色で暗い色が多かったのが、最近は暖色で明るい色が多くなっていた。とりわけ若い世代ほど過去を暗い色で表す傾向が見られた」という。

また、会の心理的効果を探るために、1週間前と会の閉会時で気分の変化がどう表れるかも調べている。若年患者さんたちはすでに何度も会に参加している人が多いので、この記念の会だけの効果は表れにくいが、参加者全体で見ると、気分上昇効果の傾向が見られたという。

病気なったことを個性として伸ばす

アンケートは、むろん色だけでなく、さまざまなことを13項目にわたって聞いている。なかでも興味深いものを挙げてみると、まずは「病気をして得られるものは何か」という問いである。

「私が予想したのは、“優しくなった自分”“日々を感謝して送ること”など、人生観の変化だったのですが、患者と健康人で見事に分かれ、患者では“友人”、支持者では“健康のありがたみ”が第1位でした。人の優しさも多く、この世もまんざら捨てたものじゃないと思いましたね。人間がこんなにも優しいってことに改めて気づかされました」

もう1つは、「つらい思いをしたとき、どう対処するか」の問いだ。これは年齢ではっきり分かれ、60歳未満では、「誰かに相談する」が多いのに対して、60歳以上では「自身で克服する」が圧倒的に多かった。人生の経験の差が反映した結果なのかもしれない。

3番目は、「他人にしてあげられそうなのは何か」の問いだ。これは患者か否かにかかわらず、「話し相手として支援」が第1位で、とりわけ若い患者と支持者でその意欲が高かったという。

齊藤さんは、これまでの結果と希望についてこう言う。

「グループケアの効果はともかく、この会がなかったらありえない心と心の響き合いがいくつも聞こえるようになったとは感じています。患者さんは、できれば、病気になったことを1つの個性として伸ばしてもらいたい。患ったからこそそれを生かして素敵な人間になってもらいたいですね」

[アンケート結果:つらい思いをしたとき、どう対処するか]

患者年齢 誰かに相談することが多い 自分自身で克服してしまうことが多い
~30代 4/8人(50%) 3/8人(37%)
40代 9/12人(75%) 2/12人(16%)
50代 6/12人(50%) 5/12人(41%)
60歳以上 3/14人(21%) 11/14人(79%)

[アンケート結果:病気をして得られるものは何か]

  人生を考える時間 人に対する優しさ 小さな幸福感 健康の有難味 経験 なし
~30代 4 2 1     2  
40代 3 4 3 2 1 1  
50代 5 2 1 1 1    
60歳~ 3 2 3 1 1   1
年齢不明     1        
患者 15 10 9 4 3 3 1
支持者 1 2 3 2 5 1 0

[アンケート結果:他人にしてあげられそうなことは何か]

  経済援助 人手支援 話し相手 政治活動 その他 なし
~30代 1 3 7(87%) 1 3  
40代 3 2 8(67%) 1 1 1
50代   4 7(54%) 1 2 1
60歳~ 3 4 4(28%)   1 1
年齢不明   1 1      
患者 7(15%) 14(39%) 27(56%) 3(6%) 7 3
支持者 2(9%) 6(27%) 17(77%) 2(9%) 0 0

アンケート調査=『若年性乳癌患者の心を支えるグループケアの試み』
「クリニカルプラクティス」2005年7月(Vol.24 No.7)より


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