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進行別 がん標準治療 知っておきたい術前化学療法、センチネルリンパ節

監修:中村清吾 聖路加国際病院乳腺外科部長
取材・文:祢津加奈子 医療ジャーナリスト
発行:2003年11月
更新:2013年6月

標準治療と認められたセンチネルリンパ節生検

センチネルリンパ節生検をしている光景
センチネルリンパ節生検をしている光景

さらに、今年のザンクトガレン乳がん国際会議での大きな話題は、センチネルリンパ節生検が標準治療として認められたことです。

日本では、これまで乳房温存療法が適応になる患者さんでも、脇の下のリンパ節郭清が行われてきました。リンパ節転移があるかどうかを確認するためには、リンパ節をとって顕微鏡で調べるしか方法がなかったからです。転移したリンパ節の数は、手術後の治療方針を決定する大きな要因になります。

しかし、脇の下のリンパ節をとると、リンパ液の流れが悪くなって、腕がパンパンにむくんだり、指のささくれや虫刺されなどちょっとしたケガでもひどい炎症(蜂か織炎)が起こるなど、患者さんには大きな苦痛となっていました。これが、「リンパ浮腫」といわれる状態です。

従来は、命を救うためには止むを得ないと考えられてきましたが、実際にとったリンパ節を検査すると「特に1期の乳がんは、脇の下のリンパ節に転移がないことが多い」といいます。

こういう人、つまりリンパ節転移のない人にとって、リンパ節郭清は不要な治療であったわけです。

生検でNOならリンパ節をとる必要はない

では、リンパ節転移の有無をもっと体に負担が少ない方法で調べる方法はないのでしょうか。

実は、それがセンチネルリンパ節を調べることなのです。センチネルとは、見張りとか前哨といった意味です。

乳がんの場合、がんの病巣から最初にリンパ液が流れていくリンパ節があることがわかりました。これが、センチネルリンパ節です。

このセンチネルリンパ節を調べて転移がなければ、その先にある他のリンパ節にも転移がないと考えられます。したがって、脇の下のリンパ節をとる必要はないという考え方です。

従来から一部の病院ではこうした考え方のもとに乳がん手術が行われてきましたが、ザンクトガレン乳がん国際会議で、今回正式にセンチネルリンパ節生検によって転移が認められなければ、NOという扱いにすると正式に認められたのです。

人によって異なるセンチネルリンパ節

実際には、がんの病巣の下や周囲にアイソトープ(放射性同位元素)や色素を注入し、これを目印に手術時にセンチネルリンパ節だけを摘出します。人によって、センチ���ルリンパ節は1個のこともあれば数個のこともあります。これを顕微鏡で検査して、転移がなければ、脇の下のリンパ節郭清は必要がないと判断されます。

もちろん、触診や画像診断で明らかにリンパ節転移がある場合には、適応になりませんが、「1期、2期の乳がんで触診や画像診断によって、リンパ節転移がなさそうな人を対象に行われる検査です」と中村さんは語っています。

実際にはこの段階で乳がんが発見される人が一番多いので、センチネルリンパ節生検の恩恵を受ける人はかなり多いと見られます。

「現在センチネルリンパ節生検でリンパ節転移がないと診断されて、腋窩リンパ節郭清をしなかった人とリンパ節郭清をした人を対象に5年間経過をみる臨床試験が行われているところです。しかし、今回患者側からの強い要望もあり、多数の臨床例が積み上げられた結果、センチネルリンパ節生検がザンクトガレンのガイドラインに採用されたのです」と中村さんは説明しています。

リンパ節郭清=リンパ節を切除すること 腋窩リンパ節=脇の下に分布するリンパ節

[リンパ節の分布]
リンパ節の分布


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