乳房再建、そのすべてを教えます 手術の方法から医師選びまでの ABC
再建手術はいつ受けたらよいの?
「同時再建」「2期再建」2通りの方法がある
乳房再建の時期には、乳がんの手術と同時に行う「同時再建」、手術後、半年以上の期間をあけて行う「2期再建」の2通りあります。以前は、再発の見逃しを避けるために2期再建がすすめられていましたが、近年、同時再建でも局所再発発見の妨げにはならず、局所再発率も生存率も変らないというエビデンス(科学的な根拠)が得られ、いつ再建してもよいとされています。
「同時再建を成功させるには、技量と経験のある外科医と形成外科医が同時に手術に立ち会う必要がありますが、これがなかなか難しい。また、乳がんの手術後半年間は、傷跡が炎症を起こしジクジクしたりリンパ液がたまったりして、細菌感染の温床になりやすいもの。とくに術後の化学療法を受ける場合は、白血球が減って感染しやすくなります。それらの点を考慮し、半年以上の間隔をあけて、2期再建を行うことをおすすめします。術後の経過時間が長いほど再建しやすいですね」
これから乳がんの手術を受けるときは?
温存手術での変形が予想されるときは、皮下乳腺全摘術を

これから乳がんの手術を受ける方なら、あらかじめ再建まで視野に入れて手術法を選ぶのが賢い方法、と南雲医師はアドバイスします。
「温存手術とは乳房の審美性を温存すること。4分の1切除などで著しく変形する(右写真参照)ようでは温存とは呼べない、と思います。変形が予想されるときは、再建を前提に、皮膚と乳輪、乳頭を残す皮下乳腺全摘術(*注1)を選択するのがよいでしょう」
皮下乳腺全摘術を手がける医師や病院はまだ少ないので、どこで受けられるか医師に尋ねてみるとよいとのこと。再発リスクが気になるところですが――。
「乳房温存手術後の局所再発率は、放射線をかけないと35パーセント(約3分の1)。皮下乳腺全摘術では乳腺の10~15パーセントが取り残されるため、3~5パーセントに局所再発が生じると推測できますが、これは温存手術で放射腺をかけた場合(10パーセント)以下のリスクです。最近では胸筋を温存した乳腺全摘術と局所再発率が変わらないと報告されています」


乳房再建の費用は?
インプラント法で再建する場合、乳頭を除いて保険が利かず、自費扱いなので、総額で約100万円前後(反対側の乳房の豊胸術は別途)。自分の組織を使う方法では、保険が利く場合もあります。
組織拡張器挿入 手術料20、麻酔料10、材料費7、投薬料2、処置料2、入院料1.5 | 42.5万円 |
傷切除縫合 (乳がん手術の傷が目立つため、きれいに縫合し直す場合) 手術料10、投薬料1、処置料1 | 12万円 |
インプラント入替 術料20、麻酔料10、材料費6、投薬料2、処置料2 (豊胸又は吊上は別途) | 40万円 |
1-2ヶ月後 | |
乳頭再建 (移植):保険 | 2.5万円 |
乳輪入墨 (1.5+1)×2回 | 5万円 |
危険因子(皮下脂肪の薄さ、胸筋の萎縮、病痕拘縮、放射線照射) | |
合計102万円 (乳がん手術の傷を縫いなおさなければ90万円) |
(*注1)皮下乳腺全摘術後の病理診断で、切り口にがんがあるとされた(断端陽性)場合は温存手術と同様に追加切除、または全摘術が必要になります。
賢い医師の選び方は?
論文の有無が決め手。症例写真も見せてもらおう
一般に、大学病院等の形成外科医は「筋皮弁法」、美容外科系の開業医は「インプラント法」を得意とすることが多いもの。また、形成外科医によっては「腹直筋皮弁法」「広背筋皮弁法」のどちらかを得意とする場合も。医師の選び方のコツは――。
「経験豊富な医師なら論文を書いているはずですから、それをもらいましょう。論文の中には症例写真も入っています。その写真は、今までの再建例の中でベストのものをつかっているはずですから、その写真がひどければ、それ以上の仕上がりにはなりえないと推測できます。論文を書いていない医師は経験不足の可能性がありますので、避けたほうが無難です」
どんなに腕のよい医師でも元の乳房とまったく同じものを再現するのはほぼ不可能です。再建手術を考えている方は、書物やサイト情報を集め、体験者の声を聞き、実際に医師の話を聞いて納得したうえで選択するとよいのではないでしょうか。
体験者とミーティング
キャンサーネット・ジャパンでは、毎月1回日曜日の午後「乳房再建のスモールミーティング」を開催中。実際に乳房再建を体験した人から、生の情報が得られます。
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TEL.03-3490-5757
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(価格はすべて税込みです)
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