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渡辺亨チームが医療サポートする:乳がん編

取材・文:林義人
発行:2004年4月
更新:2019年7月

手術前に化学療法を受けたら、しこりが消えた!

渡辺亨さんのお話

*1 セカンドオピニオン

セカンドオピニオンとは、直訳すると、「第二の意見」という意味です。現在診療を受けている医師とは別の医師、あるいは病院の意見を求めることを言います。よく間違われている方がいらっしゃるのですが、「病院を変えるため」とか、現在の担当医の診療を否定するものではありません。

*2 乳房温存手術の適応

日本乳癌学会の「乳房温存療法ガイドライン」では、乳房温存療法の適応を(1)腫瘤の大きさが3センチ以下、(2)各種の画像診断で広範な乳管内進展を示す所見(マンモグラフィで広範な悪性石灰化を認めるものなど)のないもの、(3)多発病巣のないもの、(4)放射線照射が可能なもの、となっています。

[手術の変遷(日本乳癌学会]
グラフ:手術の変遷(日本乳癌学会)

拡大手術は80年代半ばから急速に減少し、代わって乳房温存手術が急増した

*3 術前化学療法

乳房温存ができないような大きな腫瘍でも、術前化学療法を行うことにより、乳房温存手術が可能になる場合があります。しかも、同じ抗がん剤を手術後に行った場合と比べて、遠隔転移や生存率は、ひけをとらない、ということがわかっています。約8割の患者さんでは、術前化学療法により、しこりの大きさが半分以下に小さくなります。

*4 全身治療

乳がんの中には、診断が付いた時点ですでに他臓器(肺、肝臓、骨、など)に細胞数個からなる微小転移が起きている場合があると考えられています。これは、ちょうど、タンポポの種が風で飛ばされて遠くの土地に着地し、翌年の春になって花が咲いて初めてわかるように、数カ月、数年の間に、他臓器で乳がん細胞が分裂して、転移とわかることになります。したがって、手術や放射線照射など、乳房局所だけの治療では、このような微小転移を撲滅することはできないため、局所治療とあわせて、抗がん剤治療やホルモン剤治療などの全身治療が必要になります。

[局所治療と全身治療]
イラスト:局所治療と全身治療

*5 インフォームド・コンセント

化学療法では、患者さんは、自分の病気を正しく理解し、治療方法を正しく把握する必要があります。そう��ないと、担当医は、患者さんの希望や、正確な自覚症状を把握することができません。そのため、病状や治療法を正確に説明し、正しく理解した上で同意していただくという手順、すなわちインフォームド・コンセントは、不可欠です。

乳がんの治療法には、いろいろな選択肢があります。医師にまかせっぱなしではなく、患者さんご自身がきちんと知識を持ち、自分の意思で治療法を選んでいただくことが必要です。

*6 抗がん剤の副作用

抗がん剤は、がん細胞ばかりでなく正常細胞も攻撃するので、必ず副作用を伴います。とくに、好中球減少に伴う発熱や感染症、吐き気、嘔吐、脱毛等があります。抗がん剤の効果と副作用は表裏一体なので、副作用を恐れ過ぎず、副作用の発現状況や回復状況を慎重に観察し、副作用を上手にコントロールしながら、治療を続けることが重要となります。副作用が出ないからといって効果が出ない、とは限りません。

[抗がん剤の副作用と対策(EC療法)]
種類 頻度(%) 時期 程度 期間 対処法
悪心・嘔吐 60 1~3 つわり 長くても1週間 制吐剤
脱毛 100 15~17 全体 終われば生える なし
好中球減少時の発熱 5 8~12 38℃ 2~3日 抗生剤内服
色素沈着 60 25 手、顔 終われば消える なし

*7 化学療法による好中球減少

抗がん剤注射のあと1~2週後には血液の白血球の成分のうち、好中球数が減少するのが普通です。好中球数の減少がひどいときは、細菌に対する抵抗力が低下するために、熱がでることがあります。抗がん剤点滴後、1~2週間後に38℃以上の熱がでたときは抗生物質の薬をすぐに飲むことが必要です。そのときのためにあらかじめ抗生物質を処方します。熱や、下痢などの症状がなければ、好中球が減っても何の心配もありません。この期間、とくに入院が必要ということもありませんし、異変がなければ、採血検査も不要です


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