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主な改訂ポイントを押さえておこう! 「乳癌診療ガイドライン」4年ぶりの改訂

監修●佐治重衡 福島県立医科大学医学部腫瘍内科学講座主任教授
取材・文●柄川昭彦
発行:2022年9月
更新:2022年9月


外科療法の主な改訂ポイント

CQ1「センチネルリンパ節に転移を認める患者に対して腋窩リンパ節郭清省略は勧められるか?」

推奨「●センチネルリンパ節に微小転移を認める患者に対して、腋窩リンパ節郭清省略を強く推奨する。●(乳房部分切除の場合)センチネルリンパ節にマクロ転移を認める患者に対して腋窩リンパ節郭清省略を行うことを弱く推奨する。●(乳房全切除術で放射線療法なし)センチネルリンパ節にマクロ転移を認める患者に対して腋窩リンパ節郭清省略を行わないこと(腋窩リンパ節郭清を行うこと)を強く推奨する。●(乳房全切除術で放射線療法あり)センチネルリンパ節にマクロ転移を認める患者に対して腋窩リンパ節郭清省略を行うことを弱く推奨する」

センチネルリンパ節への微小転移であれば、腋窩リンパ節郭清の省略を強く推奨。マクロ転移であっても、部分切除や、全切除で放射線療法ありの場合は、省略を弱く推奨するという内容になっている。

「外科療法の分野では、このCQ1と次のCQ2でも腋窩リンパ節郭清を扱っていますが、腋窩リンパ節郭清を減らす方向に進んでいるといえます。まだ確定的なエビデンスが不足していて、弱い推奨になっている部分もありますが、腋窩リンパ節郭清をできるだけ減らしていこうという方向性が見えます。外科系では、全般的に治療を縮小化していく方向の流れがでてきています」(佐治さん)

放射線療法の主な改訂ポイント

CQ1「全乳房照射において通常分割照射と同等の治療として寡分割照射は勧められるか?」

推奨「●50歳以上、乳房部分切除後のpT1-2N0、全身化学療法を行っていない、乳癌の患者では強く勧められる。●上記3条件以外の患者でも同様に、行うことを強く推奨する。●非浸潤性乳管癌でも同様に、行うことを強く推奨する」

乳房部分切除後の放射線療法は、かつては4.5~5.5週かけて行われてきた。しかし、世界的には3週程度で終了する寡分割照射(かぶんかつしょうしゃ)が主流になっている。

「寡分割照射は通常分割照射と同等の効果があり、副作用も同等もしくは軽度。それに加え、患者さんの利便性が向上するなどの有益性があることからも、推奨される治療法であると認識されています」(佐治さん)

CQ3「乳房部分切除後の照射法として加速乳房部分照射(APBI)は勧められるか?」

推奨「下記条件にて、APBIを行うことを弱く推奨する。条件:若年ではない低リスク症例に対して、十分な精度管理のもと、臨床試験として行うか、照射���術に習熟した施設で行うこと。さらに術中照射に関しては、全乳房照射より局所再発率が高いが全生存率には差がないことを説明したうえで希望する患者に行うこと」

APBIは、放射線療法の回数を少なくし、全乳房照射の代わりに腫瘍床のみに部分照射を行う方法である。

「対象となる症例を選択し、この治療をきちんと行える施設でなら、やってもいいでしょうということです」(佐治さん)

CQ5「乳房全切除後および腋窩郭清後の腋窩リンパ節転移1~3個の患者では、乳房全切除術後放射線療法(PMRT)が勧められるか?」

推奨「乳房全切除術後放射線療法(PMRT)を弱く推奨する」

腋窩リンパ節転移4個以上の場合は、PMRTを行うのが標準治療となっている。しかし、1~3個の場合については明確なエビデンスはなく、一定の見解はないという。

「PMRTを行う方向にはなってきていますが、強くまでは推奨できなかった、ということです」(佐治さん)

患者向けガイドラインが来年刊行される

2022年版ガイドラインの主な改訂部分について解説してもらったが、医療者向けのガイドラインなので、患者さんがこの内容を正確に理解できるかというと、現実にはなかなか難しいかもしれない。ただ、ガイドラインが新しくなったということを知っていれば、主治医に、「私の治療に関わることで新しくなった点はありますか?」と聞くことができる。

「ちゃんと確認してください、というアピールになるので、それだけでも意味があるのではないか」と佐治さんは言う。

また、現在、2022年版ガイドラインの内容に沿った患者向けガイドラインの作成が進められており、2023年には刊行される予定だという。内容をしっかり理解したい場合には、そちらを読むのがいいかもしれない。

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