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〝切らない乳がん治療〟がついに現実! 早期乳がんのラジオ波焼灼療法が来春、保険適用へ

監修●木下貴之 国立病院機構東京医療センター副院長/乳腺外科
取材・文●菊池亜希子
発行:2023年9月
更新:2023年9月


保険適用前の今、RFAを受けるにはどうすればいいのですか?

実際に、適応条件を満たす早期乳がん患者さんが、RFAを受けられるのはいつになるのでしょう。

「来年の春ごろまでには保険適用されて、実際に受けられるようになるのではないかと期待しています」と木下さん。迅速に審査が進めば、もう少し早まる可能性も十分あり得るとのこと。

ただ、現在はRFAの機器は承認されたものの、保険適用はまだの状況。臨床試験も終了している今、RFAを受けたい患者さんはどうしたらよいのでしょうか。

「現在、患者申出療養という形でRFAを受けることが可能です。2017年11月末でRAFAELO試験の登録が終了した後は、臨床試験としてRFAを受けることができなくなりました。このように、先進医療や臨床試験が終了してしまった後も同じ治療が受けられるように患者申出療養という制度があります。早期乳がんに対するRFAも患者申出療養で、『PO-RAFAELO試験』として続いています」

ただ、受けられるPO-RAFAELO試験の施設は限られていて、RAFAELO試験を行っていた9施設から数施設、入れ替わりがあり、現在、患者申出療養を行っているのは8施設とのこと(図4)。

「現状、PO-RAFAELO試験でRFAを受けた人は130人ほどおられます。登録は国立がん研究センターが中心です」と木下さん。ただ、現在RFAを選択する場合、患者さんに気を付けてもらいたいことがある、と木下さんは注意喚起します。

「自由診療でRFAを行っている施設が全国にはまだあり、今回薬事承認されたことによってアクセスしやすくなる可能性があります。今、RFAを受けたいならば、PO-RAFAELO試験グループで行っている患者申出療養で行ってください。都内ならば、国立がん研究センター中央病院、東京医療センター、都立駒込病院で行っています。現在、日本乳癌学会がRFAの適応、施設、術者への教育システムなど、すべての運用を準備しているところですから、それまでは患者申出療養以外で治療を受けるのはやめてほしいと思います」

患者申出療養=未承認薬などを迅速に保険外併用療法として使用したいという患者さんの思いに応えるため患者さんからの申出を受けて、医療機関で受けられるようにする制度。保険適用につなげるデータやエビデンスを集めることを目的としている

保険適用されたらどこで治療すればいい?

では、早期乳がんにRFAが保険適用されたら、どこでも受けられるようになるのでしょうか。

「まずはRAFAELO試験、もしくはPO-RAFAELO試験を行ってきた11施設。そして、それらの施設から別の施設に異動した医師も少なからずいますので、そうした医師がいる施設を訪ねることをお薦めします。これらの情報は日本乳癌学会ホームページなどで公開する予定です。また、早期乳がんに適応承認されたRFA機器『Cool-tip RFA システムEシリーズ』を理解し、治療法の限界、有害事象の可能性を知っている術者であることが重要です。そのための教育システムも現在、構築中です」

中でも、最も大切なのが「適応の有無」だと木下さんは強調します。

「乳腺外科医は針生検を数多く行っているので、針生検の針先が熱くなるイメージのRFAは技術的にまず問題ありません。もっとも重要なことは、この人にはできるけれど、この人にはできない、という適応を明確に理解している術者であることです。いちばんあってはならないのは、〝患者さんの希望だからしてさしあげた〟という言葉です。患者さんの希望に押されて適応のない症例に行ってしまうと、再発してしまう。だから今、学会できちんとしたルールを作っているのです」

「切らない乳がん治療」の確立は目前?

「大切なことは、いきなりアクセルを踏まず、腫瘍径1.5㎝以下、腋窩リンパ節転移および遠隔転移を認めない限局性早期乳がんという適応に則って、慎重に走り出すこと。1つひとつクリアしながら、早期乳がんにおける再発させないRFAを確立させていくことです」と、木下さんは強調します。

2006年からスタートした早期乳がんに対するRFA臨床試験の最終段階、第Ⅲ相RAFAELO試験の最終解析結果を目前に、木下さんは最後に次のように語りました。

「17年間に及ぶ研究を支えてくれたのは、多くの患者さんの協力でした。当初の患者さんが元気に15年を過ぎて、『そろそろ薬事は通りそうですか? 私が協力したんだから頑張ってくださいね』と気にかけてくれます。RFAを適切に行った皆さんは、10年経っても元気で、整容性の点からも切らなかったことに満足されています。たくさんの患者さんが喜んでくれているから、17年間、走り続けることができました」

早ければ今年の暮れ、遅くとも来春には保険適用になる早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法。多くの早期乳がん患者さんが待ち望んでいる〝切らない乳がん治療〟が標準治療になる日は近い。その適応範囲が、安全に、確実に、少しずつ広がっていくことを願います。

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