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がん情報を理解できるパートナーを見つけて最良の治療選択を! がん・薬剤情報を得るためのリテラシー

監修●齊藤光江 順天堂大学大学院医学系研究科乳腺腫瘍学講座教授
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2024年2月
更新:2024年2月


治験などの医薬品情報を得るには?

保険で使える薬剤は、ネットや薬辞典、薬剤師や医師に聞くとわかります。ところが、臨床試験の情報は極めて乏しいものです。

「臨床試験情報を知りたい患者さんも多く、とくに薬を使い果たしてしまった再発転移の場合、藁をも掴む思いで薬情報を探しています。ところがそういう人たちに親切な情報提供ができていません」

がん遺伝子パネル検査が2019年から保険適用になりました。厚生労働省のjRCT(臨床研究等提出・公開システム)に、医療者や製薬企業が臨床試験を組むときに登録します。そこで、どのような臨床試験が行われているかわかります。

「ところが、jRCTを閲覧できても、たとえば、遺伝子パネル検査結果から治験情報にすぐ繋げることが困難なのです。当院で遺伝子パネル検査をしたら、結果を検討する専門家会議に私が主治医ならリモートで参加できますが、その情報は『この方が参加できる治験(第1相)が1つあります』という具合です。その先の情報(具体的にどんな臨床試験なのか)は、がんゲノム医療中核拠点病院(全国13施設)などに直接受診して、説明を聞いてもらわなければわからない。現在は主治医や残された時間が極めて貴重になった患者さん側からすると、とても不便なシステムなのです。どんな試験が登録されているか羅列されているだけのデータベースですから」

そこで、患者さんが「乳がん・Ⅳ期・これまでの使用薬剤」などの情報を入力したら、それに合致した治験データを主治医や患者さんがピックアップできるシステムに変えて欲しいと、いま齊藤さんを含む医療者・研究者や患者団体が「草の根会」を立ち上げて、jRCTに働きかけています(図2)。

がんリテラシーを高めるためには?

日本人はリテラシーが低いと言われますが?

「それは日本が環境に恵まれていて、皆さんかなり似たセンスで生活できるからです。米国では本当に些細なことでも、逐一説明しないと訴訟になる。ところが日本では説明しなくても、あうんの呼吸でわかってもらえる部分が多く、本当はちゃんと伝えるべきところを、伝えないできたことも背景にあります」

今後、がんリテラシーを高めるためには、「情報の全体像がわかっていることと、リテラシーが何かをわか��ことが大事」と齊藤さん。

「医師から患者さんに『あなたが治療法を決めてください』と言われた途端、他人任せにできません。患者さんたちには、そのため信頼できるデジタル情報を活用してもらいたいです」

そして、その活用の仕方がわかる賢さを持って欲しいとのこと。

「告知後はとくに人はだれしも動揺しますので、ひとりぼっちで意思決定を行うと、間違った選択をしてしまうかもしれません。そこを、第三者とともに賢く選んでほしいのです。その第三者の中には、ずっと生涯のパートナーでいてくれる可能性を秘めている医療者がいると良いと思いますので、医療者をもっと利用してほしいですね」

最後に齊藤さんはこう話を締めました。

「デジタル社会においでは、さまざまな問題をデジタル上だけで解決できるわけではありません。デジタル情報をうまく利用することで、大事な場面における人と人との円滑なコミュニケーションが効率よく行えることがより大事になってくるのです」

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