95%以上の患者さんで「臭いが改善した」との報告も もう悩まない!がん性皮膚潰瘍の臭いに効く薬が近々登場
95.2% の患者さんで「臭いが消えた」「不快でない」
臨床試験の結果は明らかだった。新たにがん性皮膚潰瘍を起こし、臭いが発生した患者さん21人に対し、1日1~2回、14日間メトロニダゾール外用薬を塗布したところ、20人(95.2%)で臭いが改善した。改善の度合いは劇的で、13人(61.9%)が「臭いがない」、7人(33.3%)が「臭いがあるが不快ではない」。残る1名も「中等度に不快な臭い」との評価だった(図2)。
細菌学的検査も実施した。塗布前に嫌気性菌が確認できた患者さんは9人だったが、14日後または試験中止時にこの9人から嫌気性菌は検出できなかった(ただし、別の患者1人から新たな嫌気性菌1種類を検出)。
そして、QOL全般の改善度は、21人中15人(71.5%)で「著明改善」(42.9%)または「改善」(28.6%)と評価された(図3)。
潰瘍部位に関して、滲出液が膿っぽい状態からサラサラした状態に変化する傾向や、疼痛の改善傾向もわずかに見られたが、「メトロニダゾールはあくまで嫌気性菌を死滅させ、臭いをとるのが目的の薬です。痛みや滲出液の症状には、疼痛ケアなど別のケアが必要です」
副作用がほとんどないのもこの薬の優れた点だ。試験では2人(9.5%)に潰瘍部位からの出血が報告されたが、これは薬剤を塗布したガーゼなどが患部に張りつき、はがすときに起きたものだった。「この薬で唯一注意が必要な点ですが、薬剤を交換するときは、必ずガーゼなどを十分に濡らしてからはがすことが必要です」
ちなみに渡部さんたちは、保水性の高いセルロース誘導体からなるゲル基剤にメトロニダゾールを加えた製剤も、研究段階だが開発している。いわゆる“冷えピタ”のようなものを想像してもらえるとわかりやすい。これだと患部からはがれやすく、使用も簡便だ。今後研究が進み、さらに使い勝手の良い外用薬が使えることを期待したい。
(臭い改善率)

(QOL改善度)

知っておきたい���用上の注意点
今後、メトロニダゾール外用薬は保険適用のある医薬品として販売されることで、外来通院や在宅の患者さんにも広く処方されることになる。
「今後、保険薬局の薬剤師さんにもこの薬について広く知っていただくことが必要になると思います。そして、在宅医療の患者さんたちにがん性皮膚潰瘍臭が認められたら、積極的にケアを勧めて欲しいです」
最後に、メトロニダゾール外用薬(ロゼックスゲル)の使用上の注意点をまとめておこう(図4)。

❶薬は「置く」
すり込む薬ではなく、「患部の上に薬を置くイメージ」(渡部さん談)なので、ガーゼなどの上に厚く塗って貼るか、患部にすり込まず置き、ガーゼなどで覆う。
❷ガーゼ交換時にはよく濡らす
前述のように、患部に貼りつく可能性が高いので、貼り替えるときはガーゼなどを十分に濡らしてから、ゆっくりはがす。
❸1日1~2回、貼り替える
薬を塗ることで新たに感染する嫌気性菌を死滅させるので、臭いが消えても薬は基本的にずっと使い続ける。臭いがなくなったら1日1回、臭いが強くなったら2回というように、適宜調節することも可能だ。
❹患部を清潔に保つ
ガーゼなどを外したら患部をぬるま湯で十分洗い、清潔なガーゼやタオルで水分を拭き取る。処置の前には手をよく洗う。
❺滲出液が多い場合、パッドなどを利用
ガーゼなどだけでは滲出液が服にしみ出してしまうような場合には、ガーゼなどの上から紙おむつや尿取りパッドをかぶせる。ガーゼやこうしたパッドなどの*ドレッシング剤は病院で処方したり指示してくれる場合もあるので、医師や担当の看護師に聞くとよい。
その他、痛みなどの症状が現れたら、使用を中断して医師に相談する、患部に直射日光(紫外線)を当てない、外用薬なので飲んだりなめたりしない、などの一般的な注意は他の薬と同じだ。
「メトロニダゾールを塗布すれば、早い人で3日、遅い人でも1週間で臭いがなくなります。がん性皮膚潰瘍臭のある患者さんの中には、臭いを気にして誰にも相談できず病院にも来なくなる人がいますが、この臭いはメトロニダゾールを塗布すれば消せます。どうか諦めずにQOLをよく保ち、ご家族や友人と穏やかに過ごしてください」と渡部さんはアドバイスしている。
*ドレッシング剤=傷を保護するために巻いたり覆ったりするもの
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