進行・再発乳がんにも効果が期待でき、副作用が少なくQOLが保てる 患者さんの症状に合わせて使い分けが可能な最新薬物療法
XC療法から単剤療法へ単剤療法からXC療法へ

実際に本院でも、乳がんの再発例に対してXC療法を行った経験が数多くあります。たとえば、乳がんを切除する手術を受けたあと、局所再発し、さらに肺に転移がたくさん認められるようになったトリプルネガティブ乳がんの患者さんの事例報告があります。
患者さん自身が副作用による脱毛に強い拒否感を示したため、アンスラサイクリン系抗がん剤の投与をせず、XC療法を行いましたが、開始後2カ月で肺転移が消えています。その後、ゼローダの単剤療法に切り替えられましたが、それ以降4年半、がんが完全に消えた状態が続いています(写真6)。
また、2010年の日本癌治療学会で兵庫県立がんセンターが行ったXC療法の報告では、効果が明確に判定できる25症例について、有効性が検討されました。その結果、効果があった割合は44パーセントで、この数字はトリプルネガティブ乳がんでも変わりがありませんでした。
なお、この研究では、ゼローダ単剤で治療を開始し、効果がなくなったときにXC療法に切り替えた症例(8人)も発表されていますが、これらのケースでも高い効果が続いたことが明らかになりました。
このように、XC療法からゼローダ単剤に替えたり、逆に、ゼローダ単剤からXC療法に移行したりといった使い方ができるのも、ゼローダの特徴といえそうです。さまざまな症状の患者さんに使えるだけでなく、1人の患者さんに対してもQOLを保ちながら長く使える可能性が高くなったということです。
タキサン系抗がん剤との併用療法でも
そして、もう1つのゼローダの使い方は、タキサン系抗がん剤との併用です。
たとえば、ゼローダとタキソテール(*)を併用するXT療法は、2000年に第3相試験(最終段階の臨床試験)の結果が海外で出され、タキソテール単剤よりも効果が高いことが証明されています。国内では、XT療法と���タキソテールからゼローダへ移行する治療法の比較試験を第3相試験で進めているところです。
また、ゼローダとタキソール(*)を併用するXP療法も第2相試験の結果が報告され、効果とともに、外来でも安全に投与できることが確認されました。

ゼローダ単剤療法やXC療法との使い分けですが、単剤療法およびXC療法は、命にかかわる状態ではなく、治療の緊急性が高くない患者さん、ホルモン療法が無効となった患者さん、脱毛やそのほかの副作用をいやがる患者さん、高齢者などに行われます。一方、XT、XP療法は、内臓転移があり、治療の緊急性が高い患者さん、進行が速く、早急なコントロールが必要な患者さんなどに使われています(図7)。
このように、患者さんの状態に合わせてさまざまな使い分けが可能なのがゼローダという薬です。単剤療法やXC療法の場合もあるし、症状が進んでXT、XP療法として行う場合もあるわけです。
*タキソテール=一般名ドセタキセル
*タキソール=一般名パクリタキセル
ゼローダの副作用で心がけること
ゼローダの副作用で最も特徴的なのは、手足の皮膚がヒリヒリしたり赤く腫れたり、ひび割れができて痛んだりする「手足症候群」です。症状が出たときには、一時的に服薬を休んだり、減量したり、またハンドクリームなどで乾燥を防いだりするなどのケアを行うことで長期的な 治療が可能となります。
また、白血球、赤血球、血小板などの血液細胞が減る骨髄抑制や下痢や吐き気、口内炎といった消化器症状が出ることもあります。定期的に血液検査を受け、症状が出たり、38度以上の高い熱が出たら、必ず医師に相談し、早めに対処してもらうことが大切です。
ゼローダは内服薬なので、症状が出たことに主治医が気づきにくい場合があります。そのため、自分で何か変わった様子がないか、よく気をつけておいて、早期発見・早期対応することが大切です。
ゼローダ単剤療法はもちろん、XC療法も内服による治療法なので、いつもの生活を送りながら、治療が継続できるというメリットがあります。このことは、何よりの朗報といえるのではないでしょうか。
進行・再発乳がんの治療に新しい可能性を開いたゼローダを上手に使い、長く元気に過ごしていただきたいと思います。
(構成/半沢裕子)
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